第2章 腹立たしい客
なんて考えていた時。
「オイ! 早くしろよ!」
聞こえてきたのは、拓眞の後ろに並ぶ六十代位の男性客の怒鳴り声。
(たく、もうすぐ番がくるじゃんか)
それに……
本当、相手の事を考えない人が増えたよなぁ。拓眞は憤りながら、店員に。
「では、あちらにてお願いします」
そう言われ、とまどっている女性に助け船を出すべく。 一歩前に進むと。
「すいません。俺の商品スキャンしておいてくれませんか?」
店員に頼むと。女性の左肩に軽く触ながら。
「大丈夫だから」
そう伝え。
レジの右横に設置されている、ある機械の前に連れて行って。女性の左側に立つと。
「 この機械にね、客が代金を入れて支払いをするんだ」
優しく、話し掛けたのだった。
「あ」
女性は小さく呟くと、とまどいながらも機械を操作して、なんとか代金の支払いを済ませる事が出来て一安心。
そうこうしている内に、拓眞は自分の買い物の品物のスキャンが終わりそうなのを見て。
「ちょっとゴメンね」
と、断ってレジに向かって。
(なんか時間ないのかな? すげー焦ってんな)
彼女を横目に見ながら、店員とやり取りをして支払い機に目を移すと。
「あれ? いない」
彼女は既に居なくなっていて。
未だにムスっとしている、後ろの客に場所を明け渡し、支払い機の前に移動すると。
「 お客様失礼いたします。あの女性のお客様、少し急いでいるとの事で『 親切に教えて頂きありがとうございました。直接に、お礼をしない無礼をお許し下さい』とお伝え下さい。と。私に言付けされてお帰りになられました」
そう、店員さんが話し掛けて来て。
「ありがとうございます。このご時世だから仕方ないけど。この店では、こういうシステムになった事を、彼女知らなかったんでしょうね」
「そうですね…… システムの変更のお知らせの周知徹底の努力をして参ります。こちらこそ、私どものしなくてはならない事を。お客様におさせしてしまい申し訳ありませんでした」