第9章 キミの涙。心が切なくて
「だから、今日は透明マスクをしてたんですか?」
「用意してたんだよ。なのにさ……」
「私も、持っているんです。透明マスク……使用するには、ちょっと勇気いりますもんね」
透明マスク。接客業など。人と関わる仕事をする人間にとっては、 相手の口元が見えて話している内容も、感情も。表情で分かって。便利な反面。中々浸透していなくて。街中でしながら歩いていると、どうしても振り返られちゃって。
(恥ずかしい……)
が、先に立っちゃって。
「私……右耳は 生まれつき聞こえないんです。左耳は補聴器を外すとほとんど……」
マミの告白。 とっても悲しくて。心が切なくて痛くなる告白だった。