第10章 2人きりのバースデーパーティー
その笑顔に安堵して、オレも買ってきた袋を結に差し出す。
「はい、オレも結にプレゼント」
「え?もしかしてこれっ……!」
見覚えのある袋を結が嬉しそうに開ける。
そして酒の瓶を取り出すと目を輝かせた。
「やったぁ!これ好き!
カカシ!ありがとう!!」
結が酒瓶を持ったままオレにぴょんと抱きつく。
「グラス持ってくる!一緒に飲も!」
「まだダメ」
今にもキッチンに走り出そうとする結を引き止める。
「えー、なんでなん??」
大好きなお酒をお預けくらって不服そうな結を尻目に、オレはキッチンへ向かい必要なものを集める
そして、そんなオレを追ってきた結をお姫様抱っこで抱え上げた。
「うん。準備オッケー」
「え?なになに!?」
訳もわからず抱き上げられ混乱する結に笑いかけると、オレは外に出て思い切り跳躍した。
「わー!!なに?なんで!!?」
急な浮遊感に結が目を瞑りギュッとオレの服を掴む。
屋根に上がってもまだ目を瞑って固まっている結を抱えたまま、オレは屋根に腰を下ろした。
「もう目、開けていいよ?」
胡座の中に横向きに座った結の顔を覗き込むと、恐る恐るその瞳が開く。
「急にびっくりするやん」
文句を言う可愛いピンク色の唇に、青い切子ガラスの華奢なグラスに注いだ冷酒を少し含ませてやる。
「ふふ、屋根で飲むのも出会ったときみたいでいいでしょ?」
コクリと喉が動いてお酒を飲んだことを確認してからそう言うと、「それならそうと先言ってや」とまだ少し悪態をつきながらも、結がお酒をもう一口飲んだ。
「美味しい?」
「……うん」
まだ怒ったフリをしているが、大好きなお酒でとっくに機嫌が直っていることをオレは知っている。
その証拠に自分の分も酒をつごうとしていると、結が瓶を取ってついでくれた。
「ありがと」
「ん……」
ぬるい、それでも微かに秋を感じるようになった緩やかな風に頬を撫でられながら、ちびちびと二人で酒を飲む。
こうして2人で飲む酒は、やっぱりいつもより美味い。