第10章 2人きりのバースデーパーティー
ごはんはどれも美味しくて、たわいないことを話しながら楽しい時間が過ぎる。
ごはんのあとには丸い大きなケーキが出てきて、結が誕生日の歌を歌ってくれた。
そんなことしてもらうのは小さい頃以来で、くすぐったくてどう反応していいか分からずにいると結に笑われた。
こんな幸せが自分に起こっていることが、いまだに信じられない。
ケーキを食べていると、結がかわいくラッピングされた紺色の袋を差し出す。
「あんな、カカシに誕生日プレゼントがあるねん。正直忍のカカシが欲しいものがなんなんか検討もつかんくて……。
もしいらんやつやったらゴメンな……」
ありがとうと受け取った袋は、その大きさに反してずっしりと重かった。
シュル、とリボンをほどくと、長方形の箱。
開けると見覚えのあるクナイが現れた。
「え?これ結が買ったの!?
倒れたりしなかった?大丈夫だった!?」
「店員さんがいい子やって、たくさん助けてもらったから大丈夫やった」
イヤイヤ、刃物を見ただけで血の気が引いちゃうのに、大丈夫な訳がない。
きっとかなり無理したはずだ。
クナイを結になるべく見せないように仕舞い、顔を上げる。
すると、不安げに瞳を揺らす結と目が合った。
ああ、心配が先に立ってやってしまった。
きっと分からないなりに一生懸命選んでくれたんだろう。
まずはコッチでしょ。
オレはそばにあった結の手を優しく握った。
「結、ありがとう。嬉しい」
自然にこぼれた笑みに、結も安堵の表情を浮かべる。
「このクナイはオレにとって特別なクナイなんだ」
「え?」
「これは、オレの先生が考案して使ってたクナイでね、思い出のクナイだから」
「え!?カカシの先生!?
たしか、店員さんが何台目かの火影様やって……」
「そ、4代目火影。
オレの先生で、前会ったでしょ?金髪のやたら元気なの。
次期火影の父親でもある」
懐かしい写真が飾ってある戸棚。
第七班のみんなで撮った写真。
その中の、まだ小さいナルトを指差す。
「うん!覚えてる!
ナルトくんやんな!
そうなんや……。
そんな関係が深いクナイがプレゼントできて、わたしも嬉しい!」
結が眉を下げて嬉しそうに笑う。