第10章 2人きりのバースデーパーティー
陽が傾き、空がオレンジに染まる頃、オレはみんなに追い立てられるように火影室をあとにした。
なーんで今日はみんなオレを帰らせたがるかな……
何かウラがあるんだろうけど思い当たる節は無くて、でも疲れも溜まっていたから、ありがたく帰らせてもらうことにした。
結も明日は仕事が休みな筈だし、久しぶりに一緒に酒を飲むのも悪くない。
オレは酒屋に寄ると、結が好きな日本酒を買い、柄にもなくワクワクしながら家路を急いだ。
家の前に着くと、扉の向こうに結の気配を感じる。
帰る時間もいつもまちまちだし、遅くなり先に寝てる時以外は、結はリビングで待っていることがほとんどだ。
今日早く帰らされたのは、結も一枚噛んでいる、というか、結が仕組んだことなのかもしれない。
結には連絡用にパックンを簡単に口寄せできる札を渡している。
それを使ってシカマルにでも連絡を取り、みんなに協力してもらうことは容易い。
でもなんで……?
そこまで考えて、今日の日付がオレの誕生日だったことに思い至る。
結はそれを誰かに聞いて、サプライズを用意してくれているのかもしれない。
じゃあ、気づかなかったふりをするべきなんだろう。
こんなことされ慣れてないから、なんだか緊張してしまう。
でも、家の前で突っ立っていても仕方ないし、早く結の顔を見たかった。
オレは覚悟を決めて、玄関の鍵を開ける。
「ただいまー」
そしらぬふりで扉を開けると、軽いパーンという爆発音と共にカラフルな紙吹雪が目の前に飛び出してきた。
「カカシ!お誕生日おめでとー!!」
嬉しそうに顔を綻ばせた結がオレに抱きついてくる。
でもすぐに顔をガバっと上げて、悪戯をした子供のように目を輝かせた。
「ふふ、ビックリした??」
「うん、ありがとう。結」
「あれ?あんまビックリしてへん??
て、あ!もしかして気づいてた!?」
結は案外観察眼が鋭い。
ここでシラを切ってもいいことはないかと正直に話す。