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【NARUTO】月影の恋人(R18)

第10章 2人きりのバースデーパーティー


落ち着け落ち着け落ち着け……大丈夫。
まだ少し気持ち悪いけど、血は体に通い始めている。
ゆっくり深呼吸をすると、幾分気分がマシになった気がした。
 ハンカチで汗を拭っていると、さっきの店員さんがお店から出てきた。
手には丁寧に包装紙とリボンをかけた箱。

「気分どうですか?」

気遣わしげに腰をかがめて覗き込む。

「ありがとうございます。もう、大丈夫です」

「よかったら病院まで付き添いますけど……」

いい子だな。雰囲気的に同い年くらいかな?

「ありがとうございます。でも本当に大丈夫。
あの、いきなり変な質問をしてしまってすみません。
丁寧に対応してくださって、ありがとうございました」

彼女は一瞬キョトンとしたが、すぐに満面の笑顔で返してくれた。

「全然!忍の彼にプレゼントですか?喜んでもらえるといいですね」

「はい」

笑顔で頷くと、女の子も笑って紙袋にプレゼントを入れて渡してくれた。
 そのとき別の客が店内に入っていく。

「あ、いらっしゃいませ!」

弾かれたように女の子は店に戻っていく。
が、すぐに顔だけぴょこんと出して、「落ち着くまでそこ、座って貰ってて構わないんで!ありがとうございました!」と言い、今度こそ店に戻っていった。
 わたしはお言葉に甘えて、立てるようになるまでその場で行き交う人々をゆっくりと眺めた。
顔に傷のあるイカつい、いかにも忍な人、子供の手を引いて歩くお母さん、配達をするお店の人。
見慣れないはずだった賑わう商店街の通りも、いつの間にかわたしの生活の一部になりつつある。
 あの結婚式場で、わたしは週に3回レストランのホールと、式がある土日に、着付けやメイクの見習いとして働かせてもらえることになった。
 里に来た日感じた、妓楼とは違う空気の匂いも、いつの間にかすっかり感じなくなっている。
この場所に馴染みつつある自分が不思議で、でも、すごく嬉しかった。
 汗をかいた肌を、乾いた風が通り抜けていく。
微かな秋の気配を感じながら、わたしはプレゼントを抱えて歩き出した。


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