第9章 居場所
翌朝わたしたちはぱっと準備を済ませ家を出た。
カカシが連れてきてくれたのは、カカシのお父さんや、かつての仲間のお墓。
悲しい昔話を、カカシはトツトツと話してくれた。
わたしは想像をはるか超える話に、ただ聞くことしかできなかった。
カカシは話し終えると、「結には知っておいてほしかったから」と言って静かに微笑んだ。
そのあとも、アカデミーに行ったり、同期や当時の部下だった人たちにも会わせてくれた。
先生、と呼ばれたり、わたしとの仲をからかわれたりするカカシは、なんだか別人のようで不思議な気持ちだった。
少し早い昼食を食べに入ったラーメン屋。
ここもカカシには馴染み深い場所のようだった。
美味しいラーメンを食べて、カカシは準備もあるから一度帰宅する。
「なんか、時間があんまりないから慌ただしくなっちゃってゴメンね。疲れてない?」
「ううん、カカシのこと知れて嬉しかったし、ラーメンも美味しかった」
「オレの部下だったやつ、あの金髪の……、が大好きだったラーメン屋なんだ。任務の後によく行ったよ」
「あ、今日会ったナルトくん?
次の火影って言われてる子やんな?」
「うん。
ナルトたちが今年18だから、結はナルトたちの方が歳が近いんだよね」
「……うん、そーやね」
カカシが考え込むように黙ってしまう。
「カカシ?」
しばらく黙り込んでいたカカシに呼びかけると、カカシはハッと顔を上げた。
でも意を決したみたいに真剣な顔で口を開く。
「結、結はまだ20歳でしょ?
それにずっと妓楼にいて自由もなかった。
だから、オレはこれからは結に自由に生きて欲しい。
もちろんオレとずっと一緒にいて欲しいっ、てのはあるけど……。
でもまだなんでもできる年齢だし、オレは結を家や火影の妻って縛りたくない、と思ってる……。
結はどう?
これからどうしたい?
すぐ答えを出さなくていいから、考えてみてほしい……」
「あ、の……、あのな!
わたし、前の結婚式場で働きたい!!」
自分のしたいことを言ったのなんて、小さい頃以来かもしれない。
緊張して口が乾いて上手く回らない。
けど、わたしはあのお手伝いさせてもらった時の喜びや感動をカカシに話した。