第9章 居場所
「いいと思う」
カカシは満面の笑みで答えてくれた。
「っ、でもいいんかな?火影の妻やのになんで?とかならん……?」
落籍された遊女は、妾や妻になって夫に生涯尽くすものだと教え込まれてきた。
ただでさえ家事もろくに出来ないわたしが、自分のことばかりしてていいのだろうか……。
「やっぱりそう思ってると思った」
カカシがひとつため息をつき、そっとわたしの手をとる。
「オレは結がやりたいことやって幸せそうに笑ってるのが1番嬉しい。
結婚は何年後でもいいし、形にこだわらずに結には好きなことをしてほしい」
ぎゅ、と握られた温かい手。
そこから伝わるのは深い愛情だ。
「わたし、世界一幸せな遊女かもしれん……」
「そうなら嬉しい」
視界が涙で滲むけど、わたしは精一杯の笑顔でカカシを見上げた。
カカシのボヤけた笑顔が近づいてきて優しい口付けを交わす。
人の居場所は家や建物じゃなく、信じ、愛し合う人の心の中にあるんだと、わたしはこの一夜で初めて知ることができたのだった。