第9章 居場所
わたしが不安そうな顔をしてしまったんだろう。
カカシは慌てて付け加えた。
「もちろん結婚が嫌とかじゃないよ。
そうじゃなくて、木の葉の里に来てこの一か月で、結は3回も命を狙われてる。
たぶん、火影の女だから、って理由で。
もちろん精鋭の護衛を付けてるし、今は脅威になるような敵はいないからそこは安心してほしいんだけど……。
ただ、戦後でまだ多少の混乱がある中で、もし結がオレの妻になったら、火影の嫁っていう立場で公の場所にも出ることになる。
そうしたら確実にもっと狙われる。
だから、もうちょっと状勢が落ち着くまで、待ってて欲しい」
わたしを守るため、だったんだ……
コクリと頷くと、カカシがわたしの頭を優しく撫でた。
「不安にさせたくないし黙ってようと思ったんだけど、そうしたら結婚のことまで話せなくて、違うところで結を不安にさせて……、ごめん」
「わたしこそゴメン!何も知らずに勝手にいじけて……」
「いや、完全にオレが至らなかった。
ゴメンね。
結のことは、絶対守るから……」
「うん……」
ぎゅっと抱き寄せられて、胸に温かいものが込み上げる。
「絶対避妊してたのも、それが理由……?」
この際だ。全部聞いてやろうと問いかけると、カカシがなぜか頬を染める。
「あ、やっぱ、気づいてた……?」
「うん……」
言いにくそうに目を逸らすカカシに、わたしの頭にハテナがたくさん浮かぶ。
「や、それも関係なく、もないけど……。
それより、まだ結にはオレだけ見てて欲しかった、だけ……」
頬を染めて照れるカカシが可愛すぎる。
「赤ちゃんできるとそれどころじゃなくなっちゃうって言うじゃない?だから……。
や、でも結が欲しいなら……」
「わたしももう少しカカシと2人でいたい」
モゴモゴ言うカカシの言葉を遮ると、わたしはカカシにぎゅっと抱きついた。
「カカシ、大好き……」
「うん、オレも……」
カカシの首元に顔を埋めると、銀色のえりあしから微かに香る同じシャンプーの匂い。
安心するふたりの匂いが、わたしの居場所はここでいいと、確かに教えてくれる。
「やっぱ結の匂い、落ち着く……」
髪に顔を埋めてカカシがわたしの頭に軽く唇をつける。