第9章 居場所
「結もやきもち焼いてくれるんだ……」
カカシが嬉しそうに顔を綻ばせる。
可愛い反応にキュンとしてしまうが、も、という言葉が気になった。
だってわたしは木の葉の里に来てから、お店の人くらいしか男の人と関わっていない。
「も??カカシもやきもち焼いてくれてるん?妓楼にいたときとか?」
「それもあったけど、そうじゃなくて……」
カカシが話し出したとき、わたしのお腹がぐぅー、と間抜けな音を立てた。
「ふふ、これは話したかった話にも繋がってくることだから、先ごはんにしよっか」
カカシが可笑そうに笑う。
「も、もー、笑わんといてよ!
安心したら、急にお腹空いたの!!」
「ふ、ふふ。
ゴメン。
でも元気になったみたいでよかった」
ちゅ、とすばやくわたしの頬にキスしたカカシがわたしを抱き上げ立たせてくれる。
わたし、ゲンキンだな。
さっきまですごく悲しかったのに、カカシに抱きしめて優しくされるだけで、もうこんなに心が満たされている。
ぼーっとしているわたしを「結?」とカカシが心配そうに覗き込む。
わたしは笑顔で「なんでもない」というふうに首を振ってごはんを温めるためにキッチンへと向かった。
お風呂も入って温かいコーヒーを入れて2人でソファーに腰掛ける。
本当はお酒が飲みたかったけど、結はすぐ酔っ払うからとカカシに止められた。
改まって話をするのはこの家に来てから初めてで、緊張するからちょっと飲みたかったんだけどな……。
なんとなく手持ち無沙汰で、コーヒーのお供に持ってきていたチョコレートをひとつ摘んで口に入れる。
「結」
「はい!」
反射的に変な返事をしてしまい、カカシにまた笑われる。
「ふふ、緊張してる?
そんなかしこまった話じゃないよ」
「うん……」
コーヒーを一口飲んで、ゆっくりとテーブルに置いてからカカシは喋り出した。
「あのね、結婚のことなんだけど……」
「……うん」
いきなり核心をついた話にさっきみたいな不安はないけどドキドキしてくる。
「延期、しない?」
「え……?」