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【NARUTO】月影の恋人(R18)

第9章 居場所


 別にただお茶屋さんに入っていっただけ。
ここはカカシが小さいころから育った場所だ。
親しい女の子の友達がいたっておかしくない。
なのに楽しそうな2人が頭から離れなくて、心の中がモヤモヤして気持ち悪い。
肉体的な疲れもあり、ソファに沈めた体が鉛みたいに重かった。
 少しでも楽しいことを考えようと、今日手伝った着付けやメイクのことを考える。
すごく楽しかったし、また手伝って欲しいと言ってもらえて嬉しかった。
自分の力を認めてもらえて居場所が出来たみたいだったから。
そこまで考えてハッとなる。

それじゃまるで、ここが自分の居場所じゃないみたいだ……

 ここは、この家は確かにカカシとわたしが住む家で、わたしはカカシの婚約者で……。
なのに、なんでわたしはこんなに宙ぶらりんで不安なんだろう。
そしてこの気持ちをカカシに言えないんだろう。
まだ妓楼にいた頃のほうが自分らしかったし、気持ちもちゃんと伝えられていた気がする。
 気がつくと両目から涙がボタボタこぼれていた。
頬を伝った涙が頭の下にあったクッションに吸い込まれて、そこにどんどんシミができていく。
 分かってる。全部自分の意気地が無いせいだって。
今の気持ちをカカシに伝えて、嫌われたり、呆れられたりするのがわたしは怖いのだ。

カカシに嫌われたくない……

いつからこんな弱くなっちゃったんだろう。
男に頼って1人じゃ生きていけないなんて、妓楼にいた頃には1番なりたくない女だった筈なのに……。
何者でもない自分がこんなに心細いものだなんて……。
 いくら拭いても涙は止まらなくて、クッションに顔を埋めたとき、玄関でガチャガチャと鍵を回す音がした。
 
なんで今日に限ってこんなに早いん!?

慌てて両目をゴシゴシと擦って起き上がる。

「結?ただいま」

ガチャリとリビングのドアが空いてカカシが部屋に入ってくる。

「カカシ!お、お帰り!」

わたしは平静を装って笑顔を作る。

「こんな暗いのに電気も付けないでどうしたの?」

いつの間にか日は沈み、部屋は真っ暗だった。
わたしはそれにさえ気づかないくらい、自分の感情の中に沈みこんでいたらしい。
 パチリとカカシが電気のスイッチを押すと、部屋がパッと明るくなり、わたしはその明るさに目がくらんで、思わず目を瞬いた。


 
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