第6章 痕
最近結の様子がおかしい。
そしてここ何日か、ずっと他の客が付いていて夜も結に会うことができなかった。
気になりつつも、その直後にちょうど仕事が少し途切れ、結の元を久しぶりに訪れることができた。
結は相変わらずどこか元気がない。
「結、最近なんかあった?」
あからさまに結が緊張する。
「な、なんもないよ?なんで?」
相変わらず、遊女の癖に嘘がヘタで分かりやすい。
じっと見つめて座ったまま結の方へにじり寄ると、結がじり、と後退る。
真意を確かめるように頬に触れ瞳を覗き込むと、困ったように結の瞳が揺れた。
本当は無理矢理にでも聞き出したい。
でもーーー
オレはひとつため息をつくとゆっくりと結のおでこに口付けた。
でも、結はオレの胸を押して俯くと、少し拒絶する仕草をみせる。
そしてしまったというふうに、ハッとオレを見上げる。
「あ、えと、今、生理やから、今日はできんねん!!」
オレが来た時に結が生理なことは度々あった。
でも、そのとき感じる独特な少し血が混じった匂いが今日はしない。
それに、俯いて髪が流れて首元が露わになったとき、明らかにキスマークが見えた。
「なんで嘘つくの?」
「……っあ……」
言い知れない不安が怒りに変わり、気がつくと結をその場に押し倒していた。
その反動で結の長い髪が床に散らばり首元が露わになる。
そこには2つ、3つと赤い痕がくっきりとついていた。
その痕に視線を奪われていると、結も気づいたのか、バッと手でその痕を隠す。
その手を無理矢理とり、もう一つの手も一緒に上で束ねると、袂を割り、前を一気にはだけさせる。
「やっ……!!」
結が身を捩って逃れようとするのを上に跨り体で押さえつける。
胸元には首筋とは比べ物にならないくらい、執拗に痕が残されていた。
「っ……」
でも今度目に入ったのはその無数の痕ではなく、結の頬に伝う涙だった。