第3章 知らぬ人。
両親がわたしを連れてきたのは海辺にあるお父さんが仕事の接待でよく使う別荘で、わたしはこの別荘が大好きだった。
愛「わぁ!久しぶりにここに来たね!。わたし、この別荘がすっごく好きなの!!。小さい頃、よく夏休みにお父さんとお母さんの3人で泊まったりしたのが楽しくてさ!。」
母「ふふっ。そうね、あの頃は楽しかったよねぇ。」
父「愛が砂浜でよくはしゃいでたのを覚えてるよ。それではしゃぎすぎて、足元にある貝殻を踏んでしまってそれが痛くて大泣きしてたのも覚えてるよ。」
愛「げっ!そんなことまで覚えてるの!?。もうそんな恥ずかしいこと忘れてよ、お父さん…。」
3人でアハハハハと笑い合いながらわたしの小さい頃の話をした。楽しい時間で、ずっとずっとこの時間が続かないかなってわたしは思った。
わたしの他の人が見えないモノまで見えてしまう体質のせいで両親から気味が悪いと言われていたけど、普通のフリをすることでそんな風に言われることもいつの間にかなくなった。
両親には迷惑をかけた。
怖い思いをさせてしまった。
だから、絶対にもうわたしは同じ過ちを犯さない……。
お父さんとお母さん…2人がわたしから離れないでいてくれるなら本当の自分を殺してでもこの笑い合える時間を守りたい。
母「そうそう!もう少ししたら、お父さんとお母さんの知り合いの人が来てくれると思うから愛も挨拶してね。その人も一緒に愛の誕生日のお祝いしたいんだって!。」
愛「あ!そうなんだ。うん!わかった!。」
なんだ…。3人だけでわたしの誕生日をお祝いするんじゃないのか…。でも、わたしなんかのためにお祝いしてくれる人が来てくれるなんて嬉しいな。どんな人が来てくれるのか楽しみだなぁ!
馬鹿なわたしは気付かなかった。
両親がどんなことを考え、この場所にわたしを連れてきたのかを…。
数時間後、玄関のインターフォンが鳴った。
きっとお父さんの知り合いの人が来たんだ!
急いで玄関まで行き扉をあけた。
その瞬間…………。
身体中を震えるほどの寒気が走った。
顔をあげると目の前に、男の人が立っていた。
その人はわたしを見下ろし、蛇のように細い目をさらに細めながらニコリと笑った。