第1章 "誰かを想うこと" 社長のお誕生日ss
「これを頼む、」
「畏まりました、」
店員が受け取り、会計を行なっている間に俺は財布を漁っていると……
「贈り物ですか?」
唐突に尋ねられた言葉に俺は思わず身を固くした
「なっ! ち、違ぇよっ! 俺がするんだ! 俺が、」
主張する様に身を乗り出して説明した俺に店員は若干、冷や汗を流しながら言葉を発した
「そ、そうですか……では、普通包装に致しますね」
その言葉と共に屈んで何かを取り出そうとした、それに俺は思わず反応して尋ねた
「な、なぁ……」
「はい?」
「……お、贈り物だと、何か違うのか?」
棚から顔を上げて言葉を発する店員に俺は視線を逸らしながら問うた
すると、店員が頷いて言葉を紡いだ
「はい、そうですね、贈り物なら包装が変わります! 弊社オリジナルの包装です、可愛いでしょう?」
その言葉と共に店員が見せたのは深い緑色で無地の包装だった、それは先刻、店員が包もうとしていた包装よりも頭に浮かんだ人物の、普段の印象に近かった
俺は暫しの後、呟くように発した
「……プレゼントで、」
「はい?」
再度、聞き直されて決まりが悪い俺は一度、視線を逸らしたが、再び店員へと視線を向けると自棄になって言葉を発した
「プレゼントだ! 俺がするけど……! 包装は、贈り物用に……してくれ、」
「……畏まりました、」
一瞬、目を丸くさせた店員だったが、何かを悟ったのか、小さく笑みを溢した
段々と小さくなってゆく声と共に恥ずかしさが更に込み上げて来た俺は思わず顔を俯かせた
そして、包装を待っている間に店員の手捌きを見ていた
速い上に丁寧で綺麗な包装の手捌きに見惚れていると、
「どうぞ、」
最後に先刻、選択した色のリボンが結ばれた
目前に差し出された事で俺は我へと返った
「すまねぇな、」
俺は受け取ると共に包装されたものを回して、食い入る様に見つめた
「すげぇな……」
俺は小さく笑みを浮かべると店員へと視線を向けた
「綺麗だ……ありがとう、」
俺は表情をそのままに言葉を紡ぐと店員は柔らかい人懐っこい笑みを浮かべると共に頷いた
「御相手の方、喜んでくださると善いですね、頑張って下さい!」
「だから、違ぇって!」
店員の言葉に間髪入れずに突っ込んだ俺、その間に一部始終を見ていた与謝野が腹を抱えて笑っていたのは言うまでもない