第1章 "誰かを想うこと" 社長のお誕生日ss
しかし、そんな俺をお構い無しに国木田は間髪入れずに言葉を紡いだ
「そもそも窓から出ようとするのは辞めろ、ちゃんと扉から出ろ、扉から! またお前は、請求額を増やされたいのか!」
「は? 嫌に決まってんだろ!?」
口調を変えずに告げられた俺は負けず劣らず、大きな声で言葉を返した
しかし、俺は暫しの後に目を伏せて視線を逸らした
「だって、俺にはわからねぇよ……」
「……誕生日なんて、祝った事も、祝われた事もねぇからよ……」
その言葉を最後に俺は沈黙した、そして、俺が話さなくなったからか、この場は静寂に包まれていた
しかし、沈黙を破ったのは、探偵社のオフィス内に響き渡ったヒールの音だった
「誕生日は相手の好きなモノを贈るのが善いんだよ」
「与謝野、」
後方へと視線を向けた俺が名を呼んだ事で与謝野は小さく笑みを浮かべた
「そうだ、一緒にプレゼントを買いに行こうかねぇ、ついでに買い物にも付き合ってくれよ、」
与謝野の言葉に俺は声を上げたが、直ぐに俺は首を振った
「い、善いよ、俺は……人の誕生日を祝うなんて、」
「まぁまぁ……」
しかし、与謝野は構う事なく俺の肩に手を回しながら言葉を発する
「付き合い悪ぃ奴はモテないよ?」
「……モテなくて結構だ、」
「それに、あんたが何かプレゼントしたら社長、喜ぶと思うけどねぇ」
視線を逸らしていた俺の耳元で告げられた言葉に俺は肩を震わせて、与謝野を見ると、彼女は含みのある笑みを浮かべた
「そうと決まれば、行くよ!」
「だから、俺は行かねぇって!」
しかし、首根っこを力強く掴まれては逃げることもままならず、身体は地面を引き摺ってゆく
「ちょ、ちょっと! おいっ! 人の話を聞けって!?」
「おい、誰か助けろっ! 誰かーっ!」
俺はオフィスに響く様に叫びながら、手を伸ばして助けを求めるも、全員非情にも我関せずと言った様子であった
……後で覚えてやがれっ!
俺は舌を打つと共に復讐心を胸に抱きながら与謝野に引き摺られるのだった