第23章 早とちりも程々に※
──まただ。
そう思ったのは初めてではない。よくあること。
ほの花は時々何かを諦める。
しかも、ごく自然に。
自分のことになると途端に。
もう少し欲張ってもいいのに、息をするように自分を殺すことに慣れてしまっている。
無理やり言わせねぇとそのまま過ぎて、二度と分からなくなってしまう。
「言え。」と言ったことでコクコクと頷くので引っ張っていた口を離してやると、真っ赤な顔をして見上げてくる。
その顔だけでこちらは胸の鼓動が煩いと言うのに何をそんな言い淀むことがあるのだ。
お前のことなら何でも受け止めてやるのだと覚悟もある。
「…あの、嫌ならちゃんと断って良いからね。」
「?嫌なら…?ああ。分かったから言ってみろって。」
そんなこと言われてもほの花から言われても嫌なことなんて「別れてくれ」というもののみ。この前の別離期間はもう二度と御免被る。
しかし、尚も真っ赤な顔をしているほの花にそんな負の要素は思い浮かばない。
「…口付け、っ…。」
「…??口付けがどうした。」
「……して…?」
「………………は?!」
え、ちょっと待て。
コイツの諦めたことって、コレ?!
むしろ何故?!
そんなモン断る筈もねぇし、選択肢にもないっつーのに何故コイツはこんなに言いにくそうに言うんだ?
「あのな、ほの花。まさか…俺がそれを断るとでも…?思ってねぇよな?」
「え、い、嫌じゃないなら…し、したい、です!」
「嫌なわけねぇだろうが!お前馬鹿なのか?!いや、馬鹿だな。大馬鹿野郎だな!確定だ。」
「な、っ!ひ、酷い…!!」
俺がお前に口付けしてと言われてしないわけがないし、そんなモン言わなくてもしてこればいいだろうが。
俺はいつもしたいときにしてる。
聞かなくともして良いと思ってる。俺の女だからだ。
はぁ…と深いため息を吐くとほの花の体を引き寄せてそのまま柔らかい唇に口づけを落とした。下唇を喰み、少し離すと再び角度を変えて唇を落とす。啄むようなその口づけを何度もした後、漸く唇を離してほの花を呆れたように見てやった。
嬉しそうに笑うほの花が可愛くてたまらないのだが、苦言を呈する必要がありそうだ。