第23章 早とちりも程々に※
報告によるとほの花は怪我人の手当てだけでなく、鬼も一体仕留めて、更に稀血ということで襲われていた少女を助けたと言う。
医療班兼務で行ってもらったが、十分すぎるほど役に立ったようで師匠としては鼻が高いが、体調は大丈夫だったのだろうか。
「なぁ、時透。アイツ、体調大丈夫そうだったか?」
「え?ほの花さんですか?体調悪かったんですか?!何で言ってくれなかったんですか!それなら任務は別の機会にしたのに…!」
体調不良のことが伝わってしまったために話の本筋がズレて心配させたようだが、終わったことをとやかく言っても後の祭りだ。
「そうは言ってもアイツが行く気満々だったしよ。昨日まで体調不良だったんだけど、今日は大丈夫だって聞かねェもん。確かに無理をしてる素振りもなかったから行かせたんだ。んで?大丈夫そうだったか?」
「…僕が見た限りだと大丈夫そうでした。帰りにおにぎりまで食べてましたよ?凄く美味しかったです。」
「…いや、お前も食ったんかよ。」
「はい。ほの花さんがくれました!梅と鮭です。美味しかったなぁ…。また食べたいなぁ。」
中身の具なんて本気でどうでもいい。
そもそも俺の女の握り飯食った男がいるっつー事実にどうしようもないくらいの怒りで体が震えそうなのに相手は十四歳の餓鬼。
しかも、同じ柱。
更に言えば、よほどおにぎりをもらったことが嬉しかったのか、美味かったからなのから分からないがやたらと上機嫌になった時透に対して大人げなく嫉妬をぶつけるのは憚られる。
ほの花が自らコイツにあげたようだし、此処で目くじら立てて怒鳴ってもただ自分の独占欲を晒すだけだ。
しかし、時透は十四歳の餓鬼とは言え冷静沈着だし、洞察力もある。コイツが見ていて気づかないならほの花は本当に大丈夫だったのだろう。
ニコニコしながら握り飯の感想を述べている時透だったが、任務の報告も終わりかと思いきや思い出したかのように眉間に皺を寄せると再び俺に向き合った。
「そうだった…。宇髄さんには一番大切な報告を忘れたました。」
「一番大切な報告?」
「はい。ほの花さんのことで。」
それは確かに一番大切な報告だ。
体調不良の件ではなく、別のことだと言うのは分かるが、俺にとってほの花絡みの報告は確かに一番大切だ。