第23章 早とちりも程々に※
「戻りました〜!宇髄さん!」
「ほの花さんを送ってきました。宇髄さん。」
「無一郎くん、宇髄さんの言う通りすごく強くて頼りになりました!」
「ほの花さんも噂に違わぬ働きっぷりで宇髄さんの言う通りでした。ありがとうございました。」
「お、おお…。」
任務帰りだとは思えないほどにこやかな二人に拍子抜けをした俺の反応は間違っていない。
ほの花がいつもニコニコしているのは周知の事実だが…
(…コイツ、気付いてるのか?)
そこにいた霞柱 時透無一郎は俺が知っている時透無一郎ではなかった。
それはそれは表情を崩し、ほの花と和気藹々と談笑しながら帰ってきたのだ。
しかも「無一郎くん」「ほの花さん」と呼び合うまでになっている。俺ですらなかなか名前で読んでもらえないと言うのに。
この数時間で成せる技なのか?と思うほどの仲の良さに若干の嫉妬心を感じる。
だが、相手は十四歳だ。どう見ても姉弟にしか見えない感じではあるが、こんな風に心を開いて表情を崩す時透を見るのは初めてのことで困惑すらしている。
時刻は朝六時前。
こちらもつい先刻帰ってきたばかりで、ほの花がまだ部屋にいなかったので着替えて待っていたのだが、10分ほどで帰ってきたかと思うとこの有り様だ。
「無一郎くん、送ってくれてありがとう!また機会があればよろしくお願いします。」
「全然大丈夫だよ!これからもよろしくね。ほの花さん!ゆっくり休んでね。」
「宇髄さん、何ぼーっとしてるの?大丈夫?」
「…おー。とりあえずほの花は着替えてこい。」
二人の会話を注視し過ぎて、うっかりボーッとしてしまっていたが、ほの花を先に部屋に行くよう促すと時透に向き合う。
ほの花がいなくなったことで急にいつもの時透の顔に戻ったので訝しげに見てしまったが、当の本人は全く無意識のようで淡々と任務の報告をし出したので同じ人物なのかとマジマジと見てしまった。
そんな俺の様子すら気にもとめずに報告が終わるまで表情を変えることは一度もなかった。