第4章 実力試験は実戦で
しのぶさんの巧みな話術により私はまんまと自分の生い立ちと父が鬼にされた時のことを事細かく話すこととなった。
それはきちんと話すためには避けては通れない神楽家が"陰陽師一族"ということも。
宇髄さんにあれほど口止めしたのに何という失態だ。申し訳なさすぎて物凄く今すぐにでも彼に土下座をしたい。
「なるほど〜。そういうことなんですねぇ!よぉく分かりました!それであればほの花さんも最終選別を受けてみてはどうですか?」
「え?!本当ですか?」
先程まで反対していたように感じていたのに急に受けてみてはどうかと言われて俯いていた顔を上げ、彼女を見ると変わらぬ笑顔を向けてくれている。
「はい。お館様のお知り合いの薬師さんとだけ思っていたのでそんな危ない目に遭ったらお館様のお薬のこともあるし…と思って反対でしたが、そういうことであれば受けてみる価値はあると思いますよ。」
思ってもない賛成意見に目を輝かせるが、問題は山積みだ。
そもそも一番説得しなければならないのはしのぶさんではない。
「…う、宇髄さんは…許してくれるでしょうか。」
「うーん。それはどうでしょう?きっと反対されるんじゃないですか?」
「……私も、そんな気がします。」
こう言ってはなんだが、最近の宇髄さんはとても過保護だ。
出かける時はどこに行くのか、何時くらいに帰ってくるのか必ず聞いてくるし、時間通りに帰らなければ探しにきてくれるのだ。
だからいつも寄り道を考えて帰宅時間を遅めに言っている。
それどころかくしゃみしただけで「風邪でもひいたのか?」とありったけの毛布を持ってきてぐるぐる巻きにされる。
いくらなんでも過保護すぎる。
頼りないのは分かるが、私でこんな過保護にするのだから奥様達に対してはもっと凄いのだろうか?いや、これは私が頼りないからか。
だとしたら最終選別で残ることができたら少しは認めてくれる気がした。
そして…念願だった鴉が支給されるのだ。
些か邪な理由が頭を占めているのは置いといて、わたしはやる気に満ち溢れていた。