第4章 実力試験は実戦で
「でも、私も説得してあげますよ。宇髄さんったらあなたのことを可愛がりすぎてますから。"可愛い子には旅をさせろ"です。」
「あはは…。心配性で…。私が頼りないからだと思いますけど、だからこそ最終選別で残って安心させてあげたいんです!」
「…頼りない…って言うのは少し違う気がしますが…。あぁ、ちょうど来たみたいですよ。お師匠様が。ふふ。」
そう言うと玄関で宇髄さんの声が聞こえてきた。もうそんなに時間が経っていたのか。
外を見ると夕方のようだった。
慌てて腰を上げようとするが、それよりも先に襖が開いて、宇髄さんが顔を出した。
「よぉ、胡蝶。ほの花を迎えに来たぜ。」
「はい。でも、早すぎますよ。もう少しお話したかったです。」
「そりゃァ悪かったな。また今度誘ってやってくれ。ほの花帰るぞ。」
「え、あ…は、はい!」
上げかけていた腰をそのままに二人の会話を聞いていたので、すぐに立ち上がり荷物を持つとそれを簡単に取り上げられてしまう。
こうやって宇髄さんはいつも荷物とか持ってくれるのだけど、普通は継子が師匠の荷物を持つのではないか?あまりに違う私たちの関係性にやはり頼りないのだと肩を落とす。
すると、その様子を見ていたしのぶさんがとんでもない爆弾を落としてくれた。
「宇髄さん。」
「ん?何だよ。」
「ほの花さんですが、うちのカナヲと一緒に最終選別を受けてもらおうかと思うんです。よろしくお願いします。」
え、今ーーーーー?!?!
突然の告白に宇髄さんは荷物を担いだまま目を見開いて固まってしまった。
いや、さすがに私もいま固まっている。
きっと時間にしたらものの数秒だろうが、無言の宇髄さんに私は何時間もそこで過ごしたのではないかと思うほどの時の流れの遅さを感じていた。
「…寝ぼけてんのか?寝言なら寝て言え。」
しかし、漸く口から出た言葉があまりに辛辣のもので前途多難だと思わざるを得なかった。