第23章 早とちりも程々に※
宇髄さんの継子の方をお借りしたのだからきちんと屋敷に送り届けるのは当然だと思い、彼女を待っていたが遠慮された挙句におにぎりを勧められて言葉を失った。
何と言うか…任務でなければ気が抜けるほど緩い雰囲気の彼女。ふわふわとして掴みどころのない雲みたいな人だと感じた。
それでも美味しそうにおにぎりを頬張るほの花さんを見れば、ニコニコと微笑んでいる彼女が素直に暖かくて優しい人だとも思った。
そんな彼女を見て、宇髄さんが大切にする理由も何となく分かった気がした。
この人のところに帰ることが楽しみで、この人を喜ばせたくて、この人の笑顔を見たいと思っているからあんなにも溺愛しているのだろう。
そんな人と人生の中で出会えること自体が凄い確率な気がして、唐突にどんな出会いだったのか気になった。
聞いてみると定食屋さんで体調不良のほの花さんに声をかけたのが宇髄さんだと言う。
(…宇髄さんって案外面倒見がいいからなぁ…)
ぼんやりとそんなことを思いながら、ほの花さんの話に耳を傾ける。
「でも、せっかく声をかけてくれたのに、私気持ち悪くなって宇髄さんの胸に盛大に嘔吐してしまったんですよ。」
「え?!」
ボーッとしていたと言うのにその話を聞いた時だけ瞬間的に声が出た。
どちらかといえば惚気話を聴いている感覚だったので、その話はとても衝撃的だったから。
「最悪ですよね?あの時はこんな関係になるとは思ってもいなかったですが、普通ならば100年の恋も冷めるところです。」
何て返したらいいのか分からず、相槌も打たない僕を咎めることもせずにほの花さんは話しを続ける。
「…出会ってすぐに最悪なことをしているとんでもない女なのに、宇髄さんはずーっと私の背中を撫で続けてくれたんです。その手が温かくて不思議と気持ち悪さが和らいで行ったのを今でも覚えています。」
面倒見がいいとは前から思っていたけど、例えその時目の前にいた人が具合が悪そうだとしても僕なら同じ行動をしただろうか?
宇髄さんの懐の深さと男気は前から凄いなぁと思っていたけど、そんな宇髄さんだからこそきっとこの人も好きになったんだろうなと改めて感じた。