第23章 早とちりも程々に※
いつもは羊羹を持ち歩いている私だけど、甘味をここ最近食べ過ぎているので、おにぎりにしたわけだが差し出されたおにぎりを見て呆然としてしまっている時透さんに差し出した手をいつ引っ込めようかとドギマギしてしまう。
(…突然、おにぎり食べませんか?は失礼だったかな。)
そもそも宇髄さんは柱の中でも先輩に当たるだろうし、年上だ。
そんな年上の柱の継子である私の言うことを断りにくいと思っているのだろうか。
それならば今すぐこの手を引っ込めるべきだ。気を遣わせてはいけないし、私自身はただの継子。柱である彼が気を遣う必要は全くないのだから。
「あ…えと、無理にとは言いません!私は歩きながら失礼させて頂きます。」
そう言うとおにぎりを一つ取り、それにかぶりつく。塩味と中に入れた鮭の塩焼きが疲れた体に染み渡る。
思わず「ん〜!」と目尻を下げるが、少し前を歩く時透さんがこちらを見たまま呆気に取られていて居心地が悪くなる。
しかし、そんな私を見ながらも時透さんは「聞いてもいいですか?」と話を振ってきた。
おにぎりを慌てて口に放り込むと咀嚼しながらコクコクと頷いてみせる。
「あの柱合会議の時、宇髄さんと初めて会ったのではないという口ぶりでしたよね。どこで会っていたんですか?」
それは宇髄さんとの出会いの話。
時透さんの姿を初めて見たのは柱合会議だったが、確かにその時、私はその場に足を踏み入れた瞬間、宇髄さんを見て驚きの声をあげてしまった。
彼が不思議に思うのも無理はない。
もぐもぐと咀嚼したおにぎりを飲み込んだところで彼に向き合うとその時の話を思い出しながら話していく。
「…あの日、私は宇髄さんと柱合会議の前にたまたま定食屋さんの前でお会いしてたんです。」
「定食屋…?」
「そうです。でも、私は心労から体調不良が続いていて、吐き気を催したので外で蹲っていたんです。その時、声をかけてくれたのが宇髄さんでした。」
よく考えたら体調不良な人間に声をかけてくれる優しい彼の行動によって私たちは衝撃的な出会い方をしてしまったのだが、それが無ければ今の関係性もないかもしれない。
そう考えたらあの事件も特別なものだと思える。