第23章 早とちりも程々に※
兄を殺された…か。
靄がかかったように思い出せないけど、胸に突き刺さるようだった。
人殺しではなく鬼殺しなのだから子どもの叱責など取るに足らないことではあるとは思いつつ、たった一人の家族である兄を殺されたその少女の気持ちが何故か理解できるような気もしていた。
ほの花さんは先ほどから拒否されてもめげずにその子どものそばを離れず背中を撫で続けている。
つい今まで一緒になって泣きそうな顔をしていたのに急にこちらを見たその顔は鬼殺隊の顔をしていて少し驚いた。
「霞柱様、隠が到着したら先ほどの遺体を引き渡しますが、どうやらこの子は稀血のようです。
先ほど一体鬼を斬りましたが、二体だけとは限らないかもしれません。匂いで分かるようだったので…。」
「稀血?なるほど…。確かに連絡が取れなくなった鬼殺隊士はあと二人いたので探してみます。ほの花さん、怪我は?」
「私は大丈夫です。この子には藤の花の香り袋を渡しておきます。怪我人がいたら請け負いますので鎹鴉でお知らせください。」
淡々と段取りをしてくれるので呆気に取られていると何も発しない僕が気を悪くしたとでも思ったのか不安そうにこちらの様子を窺っていたほの花さんに慌てて言葉を探す。
「…わかりました。お願いします。では、僕はこの人たちともう一度このあたりを彷徨いている鬼を探してきます。」
「承知しました。お気をつけて。」
確か…ほの花さんもご家族を鬼に襲われて全員亡くしているはず。
そして、父親が鬼化して自分で首を斬ったとあの柱合会議でお館様が言っていた。
連れて来た隊士にもう一度鬼を探しにいく旨を伝えて、森の奥に向かう。
一瞬だけ彼女が戦っているところを見えたが、「アイツは結構戦える」という宇髄さんの言っていたことが本当だったと分かると後ろの二人をチラッと見る。
「ほの花さんは医療班兼務で連れてきたのに戦果をあげてて、君たち何の戦果も挙げずに帰ったら宇髄さんに殺されるよ。…せいぜい頑張ってね。」
それは死刑宣告とも取れる発言だったと思う。
だとしてもどちらにせよ、やはりあの発言は宇髄さんを怒らせるには十分すぎるもの。
(…家を爆破されちゃうんじゃないかなぁ。可哀想に。ま、自業自得か。)