第23章 早とちりも程々に※
なかなか泣きやめずに嗚咽をしているその子の背中を撫で続けていると、僅かに足音が聴こえたので周りを見渡す。
(…時透さん…?いや、複数人じゃない。単独だ…。)
部下を置いて柱が単独行動をするとは考えにくい。…ということは鬼か。
気配をする方向に視線を向けて、薬箱を下ろすと舞扇を構えた。
─陰陽道奥義 五行の調べ
陰陽道は自然界の力を借りることができる。舞扇に仕込んである陰陽札が発動すると自然の理の水・火・木・金・土の能力が宿る。
木が生い茂る森では木と土が教えてくれる。
その先に見えたのは赤い目をして涎を垂らしながら飢えた獣のような鬼の姿。
──陰陽道奥義 式神白虎
続け様に白虎を出すとその鬼が近づいて来るのをじっと待つ。
自ら向かうわけにはいかない。後ろにはあの少女がいるのだ。私が離れたら殺されてしまう。
「…白虎、戦ってる最中はその子を守って。」
「御意。」
目視できるところまで鬼が迫ってきたのを確認すると私は舞扇を構えて飛び掛かった。
攻撃を受け止めるが、その鬼は随分人を喰らっているようで斬撃は重い。
宇髄さんの稽古で慣れていなければ吹っ飛んでいるところだ。
ギリギリ一人で何とかなりそうではあるので、その鬼の攻撃を受け流しつつ、攻撃を仕掛けていく。
振り下ろした舞扇から繰り出される斬撃を五行の調べで強化してはいるので、何とか戦えているが、視線の先に自分がいないのが気になっている。
そう、その先にいるのはあの少女。
何故彼女を狙う。
目の前に人間がいると言うのに。
しかし、その答えはあっけなく分かることになる。その鬼が発した言葉によって。
「マ、稀、血ィィ、稀血ィイイイッ!!!」
──稀血
(…そういうことか。稀血ね。)
不死川さんから稀血のことを聞いてから、稀血のことを自分なりに調べた。
不死川さんは鬼を酔わせる効果があると言っていたが、私の稀血は鬼には猛毒。
そして、稀血の中には一人喰らうだけで何十人もの人間を喰らっただけの力がある稀血を持つ人がいると言う。
匂いでわかるのかその鬼は私には目もくれずに攻撃と攻撃の合間にジリジリと距離を詰めていく。