第23章 早とちりも程々に※
ほの花さんと別れると、鬼の気配を探りながら奥へと進んでいく。
自ら志願してくれたから、あの子どもの処置をお願いしてしまったが、大丈夫だろうか。鬼はまだその辺を彷徨いているはずだ。
何を言われていたかあまり覚えていないけど、宇髄さんが聞いたらきっと怒り狂うようなことを言われていた気がする。
しかし、落ち込んでいそうな感じには見えなくて、冷静な言葉で返していたのを確認したので、芯が強いのだろう。
思っていたよりも宇髄さんに守られているだけの継子ではないというのは分かる。ちゃんと自分の意志で此処に来てくれたし、自分の役割を理解して徹してくれようとする姿は素直に感心した。
血溜まりを見ても臆することもないし、鬼の気配を察知しようとしているときの集中力は薬師の調合で鍛えられたのだろうか。
後ろからビシビシと伝わってくるそれに僕の意識がいつもより覚醒したほど。
宇髄さんは「アイツちゃんと戦えるからよ」とよく言っていたけど、実際何の呼吸を使うのかということは聞いたことがない。
そこまで詳しく聞くほど興味もなかったけど、事あるごとに入ってくる噂の中に彼女の戦闘に関することはなかった。
どちらかといえば如何にほの花さんのことを宇髄さんが溺愛しているかということのみ。
だから、正直言ってほの花さんのことをああやって中傷するような輩が出るのは想定内のこと。それでも、薬師としての実力も知れ渡っているし、宇髄さんが目を光らせているから彼女を悪く言う人なんていなかった。
(…本人を見て、思ったよりも言いやすそうな優しい雰囲気だったから言ったんだろうなぁ。ほの花さん、見た目で得もするし損もするなぁ…。)
そんなこといつもは考えないのに、宇髄さんから預かっている継子を連れてきていると言うことが頭を占めていて、今日はいつもよりも冴えている。
神経を張り巡らせて周りを見ていると、遠くの方で鬼の気配を感じた。
走っているのか、それは凄い速度で自分達がいるところとは反対へ向かっている。
そう、あの少女とほの花さんがいる方向だ。
慌ててそちらに向けて踵を返すと後ろにいた二人に声をかけて全速力で走り出した。