第23章 早とちりも程々に※
「霞柱様、私は此処でこの子の目が覚めるまで付き添います。」
「うん、その方が良さそうだね。ほの花さんよろしくお願いします。」
「はい!お気をつけて。」
流石に一般人を此処に置いたままにして全員で鬼狩りに向かうわけにはいかない。
医療班兼務で来ている私が此処に残るのが一番正しい選択だった。
私は時透さん達を見送るとその場に留まり、隠の人が到着するまで鬼殺隊士の遺体をなるべく綺麗に手当を施す。
手当と言っても実際にするのは死化粧のような行為で、血を拭き取り、切り裂かれた皮膚をできる限り見えないように包帯を巻く。
(…無念だったことだろう。)
鬼殺隊士三人がかりで倒せなかったということはまぁまぁの手強い鬼と言うことで間違いない。
柱である時透さんが来たのは正解ではないか。
三人とも死因は失血死。
もう少し早く来て止血をしていたら助かったかもしれない。
時透さんが言っていた医療班が足りないと言うのはこんなところにも弊害が出ているのか。
かと言って鬼を倒せていない状況下で非戦闘員の医療班が此処にいたら本来ならば危ない。
自分も気を引き締めなければ殺される。
あたりに気を配りながら三人の手当を終えると気を失っていた女の子がゆっくりと目を開けた。
「気がついた?痛いところはない?」
極力優しい声で言ったつもりだが、目の前で人が死んだのを目撃しているのだ気が動転していたのだろう。
私の顔を見た瞬間、悲鳴をあげるその子を慌てて宥める。
「ひ、っ!や、だ、!おにいちゃ、ん…!どこ?!」
「お兄ちゃん?…落ち着いて。私はほの花。あなたは此処で三人の人に守られるようにして気を失ってたの。覚えてる?」
「し、らない!知らない!!お兄ちゃん!お兄ちゃんどこ?!」
錯乱状態に陥っているその子を落ち着かせようとするが、立ち上がりキョロキョロと"兄"を探し出す。
よほどお兄ちゃん子だったのか私には目もくれずに覚束ない足取りでふらふらとその場を離れる彼女に慌てて着いていくが、鬼がどこに隠れているかも分からないのに当てもなく歩くのは危険だ。
何とか説得しなければと何度となく手を掴むがその度に振り払われてしまうことにだんだん焦ってきた。