第23章 早とちりも程々に※
「…うるさい。黙ってくれないかな?」
前から飛んできた小石によって離された手を握りしめながら震えるその人の視線の先にいたのはもちろん霞柱の時透さん。
無表情のままこちらを見ると、再び前を向き歩き出した。
(…助けてくれたんだよね…?)
無表情で興味なさそうにしているのに意外に優しいところもあるようだ。
後ろではブツクサと文句を垂れている鬼殺隊士のその人も流石に柱に凄まれては黙るしかないだろう。
居心地は悪くなったが致し方ない。
しかし、急に歩いていた時透さんの足が止まったので前を覗いてみると遠くに見える血溜まりが目に入った。
「…っ、血の匂い…。」
「近くにいそうだね。戦闘準備。ほの花さん、あそこに怪我人がいたらそっち優先でお願いします。」
「承知しました。」
舞扇を取り出してそれを構えながら血溜まりに向けて歩みを進めるが、そこにいたのは三人の鬼殺隊士の遺体と子どもの遺体のようだ。
この子を守ろうとしたのだろうか。
覆い被さるように倒れていて思わず口を覆った。
「遅かったみたいですね。もう少し探してみましょう。」
え?弔わないの?
ま、まぁ…確かに今は鬼を殲滅させる方が優先だと思うけど、淡々としすぎていて若干困惑してしまう。
しかし、今は彼の任務に同伴している以上、勝手なことはできない。もう一度血溜まりに顔を向けると手だけ合わせようとした瞬間、子どもの遺体と思われていたその子の指がピクンと動いた気がした。
「…え、…?」
慌ててその子に近寄り、手を握ればまだ温かいことに気付く。
「霞柱様!まだこの子は息をしています!」
そういえば慌てて戻ってきてくれて、鬼殺隊士に覆われるように下敷きになっていたその子を一緒に引っ張り出してくれた。
脈を確認してみればやはり確かに感じるその拍動に胸を撫で下ろす。
どうやら彼女は驚いて気を失っていたのだろう。
体についている血は鬼殺隊士の返り血だ。
他に特に怪我もしていないので体に自分の羽織を脱いでかけてあげた。
「…鬼殺隊の仲間がこの子を守ったんですね。とても…誇らしいです。どうか安らかに…。」
三人の鬼殺隊士の遺体に触れて最期の祈りを捧げると時透さんに向き合った。