第23章 早とちりも程々に※
そして、宇髄さんが起きると、ことの次第を伝えて、先ほどの会話に至る。
体調は快方へ向かっていると言えるし、そもそも昨日の微熱だって体は怠くなかった。宇髄さんの心配性が炸裂していただけな気もするけど、心配してくれるのは単純に嬉しいし、ありがたいので受け入れていた。
宇髄さんは時透さんの任務に同伴することを納得していた筈なのにいざ行こうとすると「一緒に行く」などと言うふざけたことを言ってくるので困ったものだ。
隊服を身に纏い、新しい髪飾りをつけると薬箱を片手に宇髄さんに手を振る。
「じゃあ行ってくるね。宇髄さんも気をつけて行ってきてね!また明日〜!」
「ま、…ちょ、待て…ほの花。」
あらゆる手で引き留めようとしてくるのは想定内だが、降ってきた口づけはいつものように甘いもの。
唇を慈しむように食むと、首の後ろに手が回り引き寄せられる。
そうすると深くなる口づけに自然とお互いの舌が絡み合う。今から鬼狩りに行くと言うのにこんな情熱的な口づけをしてどうするつもりなのだ。
「…ん…っ、も、いかないと…、」
時透さんは鎹鴉で場所と時間を知らせてくれていてそろそろ行かないと間に合わないかもしれないのに、熱い唇は離れる気配がない。
「…ほの花、行くなって言ったら…?」
「っ、だ、っん…って、良いって、んんっ、いった、んでしょ?」
「…言ったけど、想定外に早かったんだよ。」
そんなことだろうとは思ったけど、一度良いと言ったことをこんな直前で変更など出来るわけがない。
彼の背中に回した手でトントンと撫でると硬い筋肉が押し返してくるよう。情交の時も体が逞しすぎて腕を回すのに精一杯なのに、今日はいつもより小さく感じた。
「……天元、帰ってきたら続きしてね。」
「……お前、名前呼べば言うこと聞くと思ってんだろ?」
「あれ、宇髄さんのが良いの?」
「それは困る。名前がいい、けどだ!無理すんなよ。分かったな!?あと、下拭いてから行けよ。」
そうニヤリと笑う宇髄さんはいつもの彼だったが、内容は信じられないほどの卑猥なこと。
濡れるのが分かっているのだからあんな情熱的な口づけを任務前にしないでほしい。
結局、不満が溜まったのは私の方で厠に行ってから慌てて屋敷を出発したのだった。