第4章 実力試験は実戦で
あまりに嬉しそうにその薬事書を読んでいたので私は彼女に提案をしてみることにした。
「あの、もしよければお貸ししましょうか?ゆっくり読みたいのではないですか?」
本来であれば神楽家門外不出の薬事書を人に貸すだなんてことはしてはいけないのかもしれない。しかし、薬事書と言うのは薬の調合や効能など細かく書かれており、その内容は多くの人の命を守り、助けるものだ。
いま、耀哉様にしか使われてないその内容を同じく薬の知識のあるしのぶさんがここまで読み耽っているのであれば、今後とても役に立つのではないか。多くの人が助かるのであればこれを出し惜しみする必要などあるわけがない。
助けられる命が助けられないことはあってはならかいのだ。
「え…?でも、こちらは大切なものなんですよね?」
「今は産屋敷様にしか調合していませんが、母はそれで里の人々の治療を全てしておりました。きっと役に立てた方がその薬事書も嬉しいと思うんです。母も喜ぶと思います。」
しのぶさんは驚いた顔をして私をじっと見つめたが、暫く考えた後「お借りしてもいいですか?」と聞かれたのでそのままお渡しした。
「ほの花さん、ありがとうございます。何かお礼をしたいのですが、私にできることはありませんか?」
「ええ?!そんなそんな…!薬事書も役に立つならば本望ですよ!気になさらないでください。」
しかし、しのぶさんは"何かお礼を"と何度も言ってくれるので気になっていた先程の鴉のことを聞いてみることにした。
「あの、柱の方は皆、鴉が支給されるのですか?」
「え?鴉ですか?はい。これは最終選別に合格したら支給されるものです。」
「最終…選別?」
そこでしのぶさんが教えてくれた最終選別という言葉は初めて聞いたし、その時自分が鬼殺隊のことを全然知らないことに気付いた。
宇髄さんの継子にはなったが、私は正式な鬼殺隊というわけではない。
宇髄さんに守られているだけの私はまるで赤子のようだと酷く情けなく感じ、唇を噛み締めた。