第23章 早とちりも程々に※
「初期症状にしては早すぎますし、違うとは思うのですが…念のため聞いておこうと思いまして…。妊娠の可能性はないかな、と。」
胡蝶の言葉が遠くの方で聴こえる気がした。
それほど気が動転していた。嬉しいと思う気持ちと驚きと半々。
しかし、避妊はしている筈だ。
「…生々しい話して悪ぃけど、外には出してるし、避妊はしてる。」
「まぁ、そうだとしても可能性が無いわけではないので、体調をよく見ていてあげてください。症状があまりに酷似してたので気になったんです。違ったならそれはそれで良いですし、おめでたならすぐさま任務は外れないといけませんので。」
「……分かった。とりあえず帰るわ。月のモノが来なかったらまた来る。」
「そうしてください。それまではなるべく薬は飲まないようにしてあげてください。」
胡蝶の言葉にそれならば早く帰らないと風邪と勘違いしたほの花が風邪薬を飲んでしまうかもしれないと思い、慌てて部屋を出て、屋敷へと急いだ。
寝耳に水だった。
しかし、確かに可能性がないわけではないのは分かる。
それほどほの花のことを毎日毎日抱いているのだから孕んでもおかしくはない。
外に射精をしたところで完全なる避妊にはならないと聞いたことがあるし、僅かな可能性で妊娠したと言うならばあり得ない話ではない。
もし妊娠していたなら…こんな志半ばで後悔しないだろうか。
こんなことならば先に結婚しておくんだったとこちらが後悔してしまった。アイツの両親は亡くなっているが、流石に順番が逆になってしまったことを報告するのは申し訳ない。
俺自身はいつ妊娠してくれても構わないと思っているが、ほの花の思い描く未来だったかと言われれば必ずしもそうではないだろう。
いつかそうなりたいとお互いが想っているのは間違いなくても、時期が悪すぎたと思われるだろうかと不安になった。
まだ確定したわけでもないし、胡蝶からは体調を見てやってくれと言われただけ。
月のモノがもうすぐ来る可能性もあるし、ほの花にそのことを聞いてみる必要もあるだろうと俺は家路を急いだ。