第23章 早とちりも程々に※
(おいおい、寝るならちゃんと布団の中に入れよな。)
寝ているほの花の額に触れてみるが、やはり少し熱い気がするが、熱も上がってこないし風邪だとしても大したことはないのかもしれない。
帰ってきたら風邪薬でも飲ませるか。
風邪ならば悪化させるのも困ると思い、布団の中に入れるために抱き上げた瞬間、黒目がちな瞳と目が合った。
「悪ぃ、起こしたか。つーか、お前寝るなら布団の中入れよ。」
「んー、ごめんー…。もう行くの?」
「おー、行ってくるわ。良い子に待ってろよ?」
「うん。早く帰ってきてね、…天元。」
「おまっ、そ、そんなクソ可愛いこと言うなよな?!」
どうしてコイツはこうもこういう時に限って俺を煽ってくるのだろうか。
ため息を吐きつつ、体調はどうか聞いてみれば、また気持ち悪いと言う。
吐き気はそこまで無いとのことだったので、帰ってきたらやはり風邪薬を飲ませよう。
こんな時に限ってそばにいてやらないのは申し訳ないが、大人しく寝ているというので後ろ髪を引かれる想いで蝶屋敷に向かった。
最近、やっと体重も元に戻ってきていて、体調も回復したと思っていたのに、今日の状態はだいぶ心配だ。
高熱に魘されているわけではないが、やはり気持ち悪そうにしている姿は胸が痛む。
体が弱いわけでもないみたいだが、ここ最近精神的に落ち込んでいたこともあり、抵抗力が弱くなっていたのかもしれない。
打ち合わせ前だというのに気もそぞろでほの花が心配でたまらない俺は何とか彼女のことを端に追いやり、職務のことを考えようと必死だ。
数十分で蝶屋敷に到着すると、そこには既に胡蝶に時透、不死川が待機していて到着した途端苦言を呈される。
「遅いですよ、宇髄さん。どうせほの花さんに現抜かしていたんでしょうけど。」
「悪ぃって。それは間違いねぇけど、今日はちょっと体調悪そうだったからよ、勘弁してくれ。」
「え?大丈夫なんです?」
胡蝶が心配そうに聞いてくるので、微熱に吐き気という症状を端的に話すと、先に打ち合わせをしようと自ら提案する。
遅れた上に、自分の恋人のことでよりそれが遅くなるのは流石に申し訳ないと思ったからだ。
胡蝶は少し眉間に皺を寄せていたが、渋々了承してくれたので、まずは屋敷の中に通された。