第23章 早とちりも程々に※
「…三十七度五分?!え?うっそ!?壊れてないこれ?!」
「やっぱりな。何かいつもより体熱いと思ったんだよな。俺を舐めんなよ?ほら、夜着に着替えて寝てろ。」
「え、…ええ…、ちょ、ちょっと待って!もう一回計ってみる!!誤差よ、こんなの!」
ほの花に熱があるかどうかなんて毎日抱きしめて寝ている俺からしたら計らずとも手に取るように分かる。
高熱ではないにしろ、少しだけ微熱がある気がしたので様子をずっと見ていたが、食欲は旺盛。
心配せずともこれだけ食欲があれば大丈夫かと思ったが、引き寄せた体がやはりいつもより少し熱い気がしたので熱だけ計らせようと心に決めた。
万が一、気のせいならばそれはそれでいい。
勘違いが良い方向の勘違いならむしろ良かったと言える。
しかし、体温計を見て納得できないのはほの花だったようで、もう一度脇にそれを挟むと不満そうな顔で一点を見つめている。
「…体、怠くねぇの?」
「え、う、うん。体は大丈夫だよ。」
嘘をついているようには見えない。
片付けしている時も倒れるんじゃねぇかと思ってついて行ったが、今のところの足取りは軽やかで本人の言うように大丈夫そうではあった。
数分後、再び熱を計り終えたほの花が脇からそれを取り出すと眉間に皺を寄せて俺を見た。
──三十七度五分
「どうやら体温計に間違いはないらしいな?大人しく寝とけよ。」
「え、で、でも…!本当に大丈夫なんだよ?!ひょっとしたら私、元々平熱が高いのかも!!」
「お前の入院してた時の、検温記録を胡蝶のところから借りてきてやってもいいけど?」
「…わ、わかったよ〜。でも、本当に元気だから薬の調合だけはしていい?鍛錬は念のためやめておくから…!」
よほど本人的には元気なのだろう。
懇願するように俺を見上げてくるので、外見の破壊力に眩暈がした。
「そう言われてもな…、微熱はあるんだからよ。」
「お願い…!ねぇ、天元。駄目?お願いー!」
可愛い顔しておねだり上手なほの花にどうしたもんかと考えあぐねていると駄目押しの一言に結局折れることにした。
俺はコイツにおちょくられているのだろうか。
だが、こう言うおちょくられ方なら気分がいいと思ってしまった。