第23章 早とちりも程々に※
「遅すぎんだろ?!まさか今まで甘露寺と一緒にいたなんて言い訳するんじゃねぇだろうな?俺はついさっき甘露寺に確認済みだから裏は取れてんだよ。あ?ほの花ちゃんよぉ?」
「ご、ごめんって…!ちょっとおやつ食べたらお腹いっぱいになって、うたた寝しちゃって…。」
お腹が重くてふらふらと町を散歩して、さらに見覚えのある場所まで来てそこに入ったが故にうたた寝をしてしまったなんて、宇髄さんからしたら何回怒り狂えばいいのか分からないほどのことだろう。そこまで分かっているのに何故寝てしまったのだ。うっかりにも程がある。
「はぁあああ?!テメェ、無防備に外で昼寝すんなっつーの!!」
「ご、ごめんって、許してよ〜…!反省してるから…。」
「反省してんならもっと慌てて走って帰ってこいよな。」
今回は確かに宇髄さんの言う通り、自分に非があるので素直に謝るがそれだけでは怒りが収まることはなさそうでしょぼんと項垂れる。
「いや、門限に間に合うと思ってつい…。」
「間に合ってねぇだろ?!五分も!!」
「宇髄さんがお父様みたいなこと言うーー!!」
「俺はお前の恋人だろうがぁあっ!」
「あ、あの…もう夜ですし、ご近所の目もありますので一旦入りましょう?ね?宇髄様もほの花様も…。」
今日ほど正宗が神様に見えたことはないかもしれない。というほど神々しい助け舟に乗っかろうと顔を上げて「正宗〜!」と彼に近寄るが、怖い笑顔の宇髄さんに肩を掴まれて凄まれる。
「テメェ、逃げんなよ?すぐ俺の部屋に来い。」
すぐさま正宗たちに助けを求める視線を向けるが今度は助け舟どころか完全に目を逸らされて無視されてしまった。
(…助ける気全然ないな。)
履物を脱ぐと、怒りのまま宇髄さんに部屋に連れ込まれそうになるが、この日の私はとても冴えていた。
部屋に入る瞬間、伝家の宝刀を咄嗟に使ったのだ。
「…て、天元、ごめんね?ゆ、許して?お願い…。」
「なっ?!!っ…!」
「(あ、イケるかも!!)天元、お願い…。反省してるから…。」
「ほ、本当に反省してんだな?」
「うん!反省してる!!」
「……なら、今回だけは許してやる。」
名前を呼んだくらいでこんなに許してくれるならやっぱり迂闊に名前呼びを定着させない方が良さそうだと良からぬことを考えてしまった私だった。