第23章 早とちりも程々に※
ふらふらと歩いていると見覚えのある道に出た。
それはつい最近通ったところ。
記憶を頼りに歩みを進めること数分。目の前に見えてきたのは華やかな桃色。
その美しさは変わらない筈なのに、心の中が違うだけでこうも違うかというほど浮き立ってしまう。
「…やっぱり綺麗〜…。宇髄さん、こんなところよく見つけたなぁ。」
そう。そこは宇髄さんにもう一度告白をされて、ヨリを戻した場所。
思い出のツツジ畑だ。
あの時は綺麗だと思いつつも、花を愛でる余裕もなかったなぁ…。
美しく咲き乱れるそのツツジはまるで元鞘に戻ったことを祝福してくれているかのように優雅な美しさを放っている。
中央にはあの池が変わらずに迎えてくれる。
「…此処に映った人が好きな人なんてよく考えついたなぁ…。まさか私だとは思わなかったから多分物凄く苛つかせただろうな。きっと…。」
宇髄さんはあの時、何も言わなかったけどきっと私のことを鈍感だと絶対思っていたと思う。でも、あの状況で「好きな女に会わせてやる」と言われたら、誰か知らない女性に会わせられると思うのが普通だと思う。
…と言ってもそう思っているのはどうせ私だけだ。
蜜璃ちゃんにすらただの喧嘩だと思われていたし、別離していたと思っているのは私と宇髄さんだけだ。
周りから見たらただの痴話喧嘩だったのだろう。恥ずかしいことこの上ない。
池の近くにある大きな木の根元に腰を下ろすとちょうど木陰になっていて休憩しやすい。
宇髄さんのことを考えると眠くなってしまうのはいつものこと。
彼の存在は陽だまりそのもので、考えれば考えるほどぬるま湯に浸かっているかのようにふわふわとした気分になってしまう。
休憩するつもりもなく、散歩して帰ろうと思っていたのに結局、暖かくてだいぶ日が長くなってきているので少し目を瞑っていると完全に意識を手放していた。
目が覚めた時は日がどっぷりと暮れていてヤバいかな?とは思ったが、門限は七時だし余裕だろうとたかを括っていたので、帰った時に玄関前に人影が見えた時は顔面蒼白だった。