第4章 実力試験は実戦で
案の定、そこはとても立派なお屋敷で促されておずおずと敷居をまたぐ。しのぶさんから声をかけてくれたとは言え、また彼に自らの口から伝えずに勝手な行動をしてしまったことが少しだけ後ろめたい。
あれから一度町で不死川さんに会ってたとき彼の方から「次は家ごと吹っ飛ばされるに決まってるから家の外で茶をしばくぞ」と言われてしまい、彼が宇髄さんに気を遣っているのが見て取れる。
やはり継子が勝手なことをしない方がいいのだろう。
そこまで考えると玄関で履物を脱ぐ前にやはりしのぶさんに直接宇髄さんに許可を取る旨を伝えようと声をかける。
「あの…しのぶさん…!」
「ああ、先程宇髄さんから了承を頂きました。"夕方迎えに行くからそこで待て"とのことです。よかったですね。」
「え?…あ、そ、そうです、か…。」
「大福でも食べませんか?美味しいのを甘露寺さんから頂いたんです。」
肩透かしを喰らい、動揺している私を大して気にもせずにしのぶさんは客間に通してくれた。
入った瞬間畳のいい匂いに包まれると少しだけ心が落ち着いていくようだった。
「どうぞ?座ってください。いま、お茶を頼みましたので少し待ってくださいね。」
「え、と、私なんかにそんな…!お構いなく!」
「何を言ってるんですか。宇髄さんの大切な継子に失礼なことできませんよ。」
そう言ってニコニコと微笑んでいるしのぶさんに何も返す言葉はなく、言われるがまま座卓の前に座った。
「足崩してくださいね。楽にしてください。ずっとお話したいと思っていて、たまたま町であなたを見かけて思わず声をかけてしまったのですから。」
「そうだったんですか?ありがとうございます!私もしのぶさんとお話しできて嬉しいです。」
そう言われれば初めて会った時も同じようなことを言われた気がしたが、今の今まで忘れていた。
申し訳ないことをしたと思いつつ、柔らかな空気感の彼女に緊張した体は少しずつ解れていった。