第22章 今の上官は風柱様です!※
話がしたいというほの花を抱き上げると、そのまま縁側に降りて、待ったなしで自分の部屋に入った。
そもそもほの花に夜這いをしようと思って部屋を訪れたらそこはもぬけの殻で、どれほど焦ったか。
耳を澄ませてみれば上からほの花の鼻歌が聞こえてきたので、慌てて屋根上に向かったわけだが、その時見た部屋に布団は敷かれていなかった。
どうせならこのままほの花を押し倒してやろうと思っていたのに布団が敷いてないんじゃ困る。それならば自分の部屋に連れ込むのは当たり前のことだ。
「…あの、一緒に寝るの?」
「当たり前だろ。」
「…話してもいい?」
よっぽど大事な話なのか真剣な顔を向けてくるほの花に一旦、自分の欲は仕舞い込むしかないのか、と少し残念に思う。
畳の上にほの花を降ろすと、彼女の話を聞くために目の前に座った。
「…ん。で?話って?」
ほの花の長い髪を前からくるくると指で遊べば、少し微笑む彼女が綺麗で魅入ってしまう。
これから大事な話をするだろうが、どんな話であろうと自分の気持ちは変わらないと言い切れるし、彼女を支えたいと思う気持ちも変わらない。
昨日までの時間に比べればいまは天国なのだから。
「あの、…宇髄さんに、言ってないことがあって…。伝えておきたいと思ってお時間もらいました。」
「言ってないこと?前に言ってた隠し事の件か?」
突然縋り付いてきたあの日のことは鮮明に覚えているが、そのことはまだ話せないと言われて結局あれから聞いていない。
ただそんなこと聞かなくとも別にほの花への気持ちは変わらないのだから既にどっちでも良かった。
話すことがつらいならば聞かずにそばにいることを選ぶことなど簡単なことなのに。
しかし、彼女の顔はその時のような悲しみは感じない。
どちらかといえば強い意志を感じるのでそのまま聞くことにした。
「え、と…半分正解で半分違う…。言えないこともまだある、けど…、宇髄さんには言っておきたいと思うこともあって、そっちを話す…。いい?」
そんなこと聞かれなくても良いに決まってるが、ご丁寧にお伺いを立てるほの花に頭を撫でることで肯定してやる。