第22章 今の上官は風柱様です!※
──神楽ほの花さん。もう一度俺と結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?──
よく考えたらこんな風に正式に交際を申し込んだことなんて初めてのこと。
俺だって少なからず緊張はしていた。
ほの花の手は細くて小さい。
震えるそれを怖がらせないように少しだけ握り締めれば大粒の涙がそこに落ちてきた。
見上げてみれば綺麗な一筋の涙が小さな顔に跡をつけている。
跪いたままほの花の言葉を待っていると、顔をくしゃくしゃにしながら話し出した。
「…好きな人…できたんじゃないんですか。」
「ん。出来た。俺、やっぱお前が好きなんだわ。代わりなんていねぇよ。」
「私は相応しくないって…言ったじゃないですか。」
「相応しいとか相応しくないとか関係あるか?ただお互いが想い合ってりゃいいんじゃねぇの?」
もう解放されろ、ほの花。
自分を許してやれよ。もう一度愛させてくれ。
すると、ほの花はゆっくりと膝を折り、俺の目の前にしゃがみ込み、視線を合わせてきた。その瞳からは大粒の涙が流れ続けていて指でそれを掬ってやると、顔をくしゃくしゃにして嗚咽をし出す。
「…こ、後悔、しませんか?」
「するわけねぇだろ。」
「…私、き、汚いですよ…?」
「汚くねぇって。お前はいつでも綺麗だ。」
「うず、いさんが…っ、好き、です。大好きです。ほんとは…ずっと、…ずっと、宇髄さんに、だき、しめてほしかった…!!」
そう言って悲痛な想いを吐露するほの花に思わず手を引いて腕の中に閉じ込めた。
華奢な体が折れないように、それでも強く強く抱きしめた。
「…もう、離さねぇから。お前は…俺の女だろ?」
「ひ、っく…は、はい。」
「敬語やめろ。やり直し。」
「ひょえ、…う、うん。」
「ほの花、愛してる。…あと、これ返してもいいか?」
懐から出したのはいつぞやに不死川から返された耳飾りの片割れ。
片方だけなのにずっとそれをつけ続けてくれていたほの花。
それを見て、目を見開くと嬉しそうにコクンと頷いてくれたので、空いている耳にそれを付けてやればやっと対になった二つの耳飾りがほの花の耳で揺れている。
二つで一つ。
それはまるで自分たちのように。