第22章 今の上官は風柱様です!※
「…映ってんじゃん。」
そうやって笑う宇髄さんの顔を見ていられなくて、立ち上がって下を向いた。
「…もういいですか?さ、紹介してくれるならさっさと紹介して下さいね。行きましょう?」
結局、何がしたかったのかわからなかった。
綺麗な景色を見せたかっただけならこんな遊びのようなやり方をされても嬉しくも楽しくもないし、ちゃんと言ってくれたらいいのに。
師匠に遊ばれた継子の末路としては最悪だ。
「…やっぱお前は馬鹿だな。ばーか。ばーか。ばーか。」
「…は、はい?な、何なんですかー!今度は悪口ですか?!もう帰ります!!」
「紹介したじゃねぇか。今。」
………どうしよう。やっぱり宇髄さんは今日頭がおかしいのかもしれない。疲れでも溜まってるのかな?そこまで考えると今度は心配になってきた。
「…あの、体調でも悪いんですか?」
「……池に映ってたのは?」
まだ言うか。
もう何だと言うのだ…。それでも宇髄さんの顔が変わらず優しいままだから仕方なくもう少しだけ付き合うことにした。
「…だから、空と、太陽と、ツツジ……と、自分の顔ですって…。」
「いい女だったろ?言った通りクソ可愛かっただろ?」
そこまで言われて、漸く何のことを言っているのか見当がついて目を見開いた。
(…え?まさか…?い、いや、そんなはずない。)
水面に映っていたのは
空と
太陽と
ツツジと
……私?
「…え?……へ?」
困惑して頭がぐちゃぐちゃになってきた私の目の前に宇髄さんが急に跪いて手を取った。
その手は出会った時から変わらない。
大きくて
暖かくて
大好きな手。
そのまま私の手に口づけをすると、こちらを見上げてもう一度笑ってくれた彼の姿に唇を噛み締めた。
「…神楽ほの花さん。もう一度俺と結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?」
その目は真剣で、とても目を逸らせない。
揶揄われているのか?
まさか想い人にする告白の予行演習でもしたのか?
そんな考えも浮かんでくるけど、どれもいまの状況にはしっくりこない。
そして懐から出した髪飾りを私に差し出してくれると耐えきれなくなった涙が彼の手に落ちた。
こんなの夢だ。
夢に決まってる。
だけど、
夢なら覚めないで。