第22章 今の上官は風柱様です!※
ツツジ畑を抜けて町に戻るのかと思いきや、彼が向かうのは中央にある池。
整備されているのかその水は思ったよりも綺麗で雲ひとつない美しい空と太陽も映っている。
するとそこに立ち止まると「此処覗いてみ?」と言われて、私は首を傾げた。
突然、覗いてみろって…。
今日の宇髄さんは何だか不思議なことばかり。
空気の読めない人ではないのに、私が嫌がってるのを分かっていながら連れ回したり、急に想い人も紹介するとか言ってきたり。
覗いてみたところで"おたまじゃくし"か"アメンボ"がいるくらいだろうに。
え、まさかそれを見せたいとか?
子ども…?!
秘密基地に連れてきてやった子どもの感覚?!
もしそうならば、それはそれでちょっと可愛いとすら感じてしまったのは惚れた弱みだろう。
仕方なく、その池を覗き込むが、おたまじゃくしもアメンボも見当たらない。
ただ自分の顔が映ってるだけのその水面を見て顔を顰めて振り返る。
「…何にもいませんけど。」
「え?映ってるだろ?」
「映ってる?え?!あ、空と太陽とツツジが?ああ、綺麗ですよね。水面に映ると。」
「…もう一つ映ってんだろ?」
「ええ…?」
もう何なのだ。"映ってるものを探せ"という遊びならばもう少し子どもの頃にやるか、二人の関係が恋人の時にやって欲しかった。
今やってもらっても揶揄われているようにしか感じない。
もう一度覗き込んで水面を睨みつけてみるが、底にある石や小さな魚のことのことでも言ってるのだろうか?
「…映ってただろ?」
「え〜?あの小さい魚のことですか?」
「はぁ?魚なんてどうでもいいわ!映ってるモンがあるだろって言ってんの!」
「映ってるのは空と太陽とツツジと…あと、覗き込んだ自分の顔くらいですーーー!!何も後は映ってませんーーー!!!」
あまりにしつこいので、喧嘩腰になってきて睨みつけてやろうと思って後ろを振り向くと優しい顔をして笑ってる宇髄さんがいて、胸がトクンと高鳴った。
な、何?
何でそんな顔して見てくるの?
まるで昔に戻ったかのようなそんな笑顔に心臓が苦しくなった。