第22章 今の上官は風柱様です!※
連れてこられたのはいつぞやお遣いに来させられた小間物屋さん。
雑貨を奥様が仕入れていると言っていて、凄く洗練された作りのものが多かった。
ここで買ってもらった花飾りはあの鬼狩りの日に使い物にならなくなってしまったのは遠い昔のように感じる。
「あ、宇髄様、こんにちは。」
「お、奥さん。何か良いのあるか?」
宇髄さんは社交的な人だからこのお店の人ともすっかり顔馴染みのようで楽しそうに話している。こんな時、手持ち無沙汰だけど、彼の買い物に付き合うために来ただけなのだから大人しく後ろにいた方がいいだろう。
相変わらず趣味のいい髪飾りやら耳飾りなどを出してもらってそれを真剣な目で見つめる宇髄さんの横顔は格好いい。
でも、見ているものは想い人に贈るもの。
虚しいと感じるのは仕方ないと思う。
「ほの花、ちょっと来い。」
「あ、は、はい…!」
「んー、ちょっとこれは違うか。じゃあこっちか。」
宇髄さんが私を隣に呼びつけ、見せてもらっていた装飾品を合わせてくれるが、本当に私に合わせて選んでいいのだろうかと心配になる。
自分なら他の女性に合わせて選んだものなんて欲しくない。
でも、そんなこと気にしない心の広い女性だと言うのだからこちらが気にしなくていいのか…?
「なぁ、こっちとこっちならどっちが良いと思う?」
それなのに、宇髄さんは何も気にせずにそんなこと聞いてくるものだからもうわけがわからない。二人のことに継子が首を突っ込むのは良くないか。
頼まれたことだけやればいい。師匠がそうしろと言うのだから。
「…私ならこっちのが好きですけど…。」
「そっか。じゃ、これにするわ。」
「ええ、あの、…本当に私が選んじゃって問題ないですか?」
「だってお前はコレが良いって思ったんだろ?」
「…そう、ですけど。」
「ん。ならコレにする。ありがとな。選んでくれて。」
何でこんな時だけ昔みたいにそんな優しい顔して笑うんですか。
恋人の時の笑い方じゃないですか。
今の私に向けるものじゃないのに。
…羨ましい。
あれを贈ってもらえる女性が。
心の底から。
お会計をしている宇髄さんの背中をただ眺めることしかできない私は
ただの継子。