第22章 今の上官は風柱様です!※
「ハハッ、驚いた?驚いた?」
悪びれもせずにそうやって笑う宇髄さんに軽く腹が立ってきた。そんなすぐに好きな人ができるなら私のことなんか大して好きじゃなかった証拠だ。
馬鹿みたいじゃないか。自分一人で彼を想って。
いや、別にいいじゃないか。何でこんなこと思うのだ。自分が選んだこと。彼は悪くない。自分でもう恋人に戻れないって言ったのだ。
「…お、驚きましたけど、宇髄さんは美丈夫だからすぐ良い人ができるとは…お、思ってました。」
「いや、それがまだ恋人じゃねぇからな。何か贈ろうと思ってよ。だから付き合えよ、な?」
「…で、でも…他の女が選んだ物を喜びますかね…?宇髄さんが選んだ方が嬉しいんじゃないですか?」
あれほど共に出かけることを喜んでいたと言うのに今度は行かない方向に持って行こうと必死な自分はなんて滑稽なのだろうか。
「あ?良いんだって。アイツはそんなこと気にしねぇ心の広い女だからな。」
「あ、そ、そうなん、ですか?」
「おー、とにかく付き合えよ?帰りに甘味でも奢ってやるからさ。あー、俺優しい師匠だなぁ〜。」
「そ、そうですね…。わ、わーい。甘味楽しみです〜!」
何にも楽しみじゃない。
何ならまた食欲不振をぶり返しそうだ。
いつかはもちろん彼の恋人を見なければいけないかもしれないとは覚悟はしていた。
しかし、早すぎる。
心の準備もできない内にあっという間に好きな人ができたって平気で言う宇髄さんに心がついていかない。
甘味なんていらないから行きたくない。
お腹痛くなりたい。頭痛くなりたい。
仕事が忙しいことにして行きたくない。
「体調良くなって良かったよな〜!助かったぜ〜。やっぱ女の感性のが良い物選べると思うんだよな〜!」
「あはは…そうですね…。」
「じゃあ午後二時に準備して待ってろよ?」
軽い足取りで出て行ってしまった宇髄さんに全身が震えた。
怒りと悲しみが入り混じって叫びたい気分だ。
「…宇髄さんの馬鹿ー…。おたんこなすー。私以外無理って言ったじゃん…。」
馬鹿は私だ。
おたんこなすも私だ。
そう仕向けたのは自分なのにうまく頭で処理ができなくて宇髄さんに隠れて苦言を呈することしかできない。
そんな自分が本当に大嫌い。