第22章 今の上官は風柱様です!※
「なぁ、ほの花。今日の昼さ、飯食ったらちょっと付き合えよ?」
宇髄さんはあれから私に触れることはなくなった。しのぶさんのところに連れて行ってくれる時だけ抱き上げて連れて行ってくれたけどそれ以外は指一本触れてこなくなった。
その代わり、継子として完璧に扱ってくれている。たまに冗談を言ったりすることもあるし、あの別離期間も恋人だった期間も本当に夢だったかのように接してくれている。
そんな彼の優しさに救われるけど、悲しくもある。
「どこかに行くんですか?調合が終わったら大丈夫です。」
「おー、終わったらでいい。買い物に行きてぇから付き合え。」
「お買物?良いですけど、荷物持ちなら正宗達のがいいんじゃないですか?」
「いやいや、男は困る。女じゃねぇと。」
荷物持ちと言ってもこの家では宇髄さんほどの力持ちはいないし、よく考えたら正宗たちを連れて行かずともいいか。
しかし、女じゃないと困る買い物とは一体どんな買い物なのだろう?
不思議に思いながらも師匠の買い物に付き合うのも継子の仕事の内か…と自分を納得させるが、本音を言えば彼とお出かけできるのはとても嬉しくて顔がにやけるのを必死に隠した。
「女じゃないと買えないんですか?」
「あ?そうじゃねぇよ。お前に選んで欲しいんだ。」
「何をですか?」
…思えばそんなこと聞かなければ良かった。
聞かずとも一緒に行けばいいだけの話だったのに何故聞いてしまったのだろうか。
「聞いて驚くなよ?」
「??……はい。」
「実はな、好きな女ができたからそいつに贈り物買おうと思ってな!だからお前一緒に選べ。」
「……え?」
最初聞いた時、ちゃんと理解できなかった。
"好きな女ができた?"
いや、別に構わない。私たちはもう何の関係もないのだから。でも、まだ関係を切ってから二週間だ。
そんな簡単に好きな人ができるものなのか?
ひどい絶望感で目眩すらした。
それでも嬉しそうに笑う宇髄さんの姿に水を差すのはどうなのかと思い、唇を噛み締めて笑顔を作る。
ついさっきまで"お出かけーー!"と浮き立っていた自分に教えてあげたい。
ぬか喜びしたら駄目だよって…。
その後の絶望感は息が止まるほどのことだから。