第22章 今の上官は風柱様です!※
分かってたし、それでいい。
なのに宇髄さんが部屋を出て行った瞬間、涙が溢れ出た。
泣くな…。
泣いたら耳の良い宇髄さんに聴こえてしまう。
自ら恋人に戻れないと言っておいて何を泣くことがあるのだろうか。
正しいことをした。
私は間違ってない。宇髄さんにはもっと相応しい人がいるのだから。私はただの継子だ。
涙が出るのは熱のせいでまともな思考回路じゃないだけのこと。解熱剤が効いてきたらすぐに治まるはず。
私は置いてくれてあった替えの夜着に着替えるとそのまま布団の中に潜り込んだ。
忘れよう。
忘れないと。
夢だったんだ。
幸せな夢だった。
宇髄さん、素敵な夢をありがとうございました。
明日からは継子としてちゃんと振る舞うから。
だから今だけはあなたのことを想うことを許して下さい。
「…愛してます。」
枕に顔を埋めながら漏れ出た言葉にすら涙が溢れ出る。
愛してます。
愛してました。
お願い、幸せに、なって下さい。
うそ、本当は
あなたと添い遂げたかった。
翌日、私の熱は下がったけど、念のため栄養剤の点滴を打ってもらうために宇髄さんがしのぶさんのところに連れて行ってくれた。
前日にあんなことを言ってしまったと言うのに私と違って彼の顔はスッキリとしていて、普段通りの姿に肩透かしを喰らう。
気まずいままの関係もちろん嫌なのだが、気にしてなさそうにされるのも何だかモヤッとするなんて随分と我儘な女だと思う。
自分で彼の恋人に戻らないと決めたのに、縋って欲しかったなんて今更気づいても遅いのだ。
それでもたかが継子の私のために食事療法も根気よく続けてくれながらも、三日に一度はしのぶさんのところに点滴に連れて行ってくれた宇髄さんの優しさのおかげで私の栄養失調は二週間ほどで良くなった。
しかしながら、体力を戻すための地獄の鍛錬が始まり、いよいよ師匠と継子としての関係性だけになってしまったと自分勝手に落ち込みかけた頃に更なる絶望に突き落とされる出来事が起こった。