第22章 今の上官は風柱様です!※
── もう宇髄さんに触れてもらえるほど綺麗じゃありませんから
その言葉がほの花の全てだと感じた。
今までの彼女の行動や言動の意味も手に取るように理解できるし、一本の線で繋がって腑に落ちたのだ。
それを何のことを言っているのか分からないほどぼんくらじゃねぇ。
風呂に入ったか入ってないかとかそんな理由でもない。
お前がずっと苦しんできたことは…
「…お前は綺麗だから。」
「綺麗じゃないです…。だから…もう宇髄さんの恋人には戻れないので…!」
「ほの花。」
「私なんかよりもっと素敵な人がたくさんいます。むしろ私の恋人が宇髄さんなんて贅沢すぎました…!」
震える声で捲し立てるような言葉の数々。
しかし、こちらは全く見ない彼女の表情は窺い知れない。
「…ほの花。俺が好きなのはお前なんだけど。」
「宇髄さんには相応しくありません。忘れてください。夢だったんですよ。私はあなたの継子です。」
駄目だな。今のほの花に何を言っても暖簾に腕押し状態。こちらを見ようともせずに頭の中で浮かんだ言葉をそのまま口にしているだけ。
そこに己の心はない。
そんなこと見ればわかる。
出会ってから半年ほどだが、ほの花のことは手に取るように分かる。
それほど愛してきたし、ほの花を見てきたつもりだ。
それでも大事な時にコイツに寄り添わずに、気に病むような言葉を浴びせ、その上、ほの花が此処まで思い詰めるまでそばにもいてやらなかった。
コイツがそう思うのも無理はない。どれだけ此処に戻りたかったことだろう。
一人で心細かったことだろう。
誰にも胸の内を言えずに苦しかったことだろう。
こんなになるまで追い詰めた。
相応しくないのは俺の方なのに、そんなことを自分には選択できない。少なくとも俺のためにそばにいることを諦めようとするほの花は間違ってる。
…間違ってるがコイツはそうしないと前に進めないのかもしれない。
だったら一旦、それを受け入れてやる。
でも、俺は決めてる。お前以外要らないんだ。
「…もう、戻れないのか?」
「…はい。」
「…分かった。ほの花、傷つけてごめんな。」
「……宇髄さんは、悪くないですから…。」
そうやって笑うほの花は消えそうなほど儚くて美しかった。