第22章 今の上官は風柱様です!※
体が熱い。熱いし、頭がふわふわする。
喉も乾いた。
それなのに目を開ける気になれなくて、睡魔にそのまま身を任せていたが、温かいものに体が包まれたかと思うと、急に口腔内に水分が入ってきて意識はゆっくりと浮上して行った。
(…あったかい…、いいにおい…。)
入ってきた水分を受け入れてそのまま嚥下すれば、感じたことのある苦味なのにいつもよりそれは甘く感じる。
(…あれ、私、薬の調合変えたっけ…?)
そう感じるほど甘いそれにゆっくりと目を開ければ視界に映ったのは大好きな人が苦笑いを向けていた。どうやら夢でも見ていたようだ。
でも、顔が見れただけでこんなに浮き足立つ自分の心は相応しくないと漸く浮上した意識が教えてくれる。
「…うずい、さん?」
「……大丈夫か。酷ぇ熱だぞ。」
彼の言う通り、自分の体は熱くて、熱があることは明白。発熱した理由も医療者なので何となく頷けるし、情けなくて恥ずかしくて唇を噛み締めた。
「…すみません。大丈夫です。解熱剤…」
「──は、今飲ませちまった。悪ぃ。」
「………へ?」
途端に感じる苦味にこれは熱が出た時特有の口の不味さではなく、先ほど感じた感覚が夢じゃなかったのだということに目を見開く。
どうやって飲ませたのか?なんて野暮なことは聞けない。
熱に魘されていたのか耳の良い彼は寝ていたのにわざわざ来てくれたのだ。寝てる間にされたことを咎めるつもりもないし、むしろ不可抗力とはいえ、嬉しいとすら感じてしまう自分がいるのも否めない。
しかし、彼の行動を咎めることはしなくても、申し訳ないとは感じてしまう。
「…すみません。ありがとうございます。これで拭いて下さい。あと口を濯いできて良いですよ。」
「は?」
枕元に置いてあった使ってない手拭いを渡せば眉間に皺を寄せて訝しげにこちらを見る宇髄さんだが、その手を引き下げることはしない。
この際だからちゃんと言おう。
あなたの隣にいるのは"継子"のほの花だけだと。
「…もう宇髄さんに触れてもらえるほど綺麗じゃありませんから。」
ぺたりとくっつく夜着は汗が冷えてきたのか少し冷たい。
彼の隣には私の夜着が出ていて、わざわざそれを出してくれたことが分かる。
(…優しく、しないで。)