第22章 今の上官は風柱様です!※
夜中に聴こえてきた荒い呼吸音に目が覚めた。
(…ほの花?)
体を起こして耳を澄ませると、聞こえてくるのは隣の部屋。俺は立ち上がり、襖を出るとほの花の部屋に向かった。
「…ほの花?入るぞ。」
彼女の部屋の中にある時計を見るとどうやら朝方の五時。変な時間に目が覚めてしまったのだとその時初めて知るが、部屋に入り、彼女の顔を見た瞬間、目を見開いた。
苦しそうに顔を歪めて、荒い息をしているほの花の額に触れば、恐れていたことが早々に起こってしまったことを意味していた。
顔は真っ赤で、熱を帯びていて、額は汗で濡れている。よく見れば全身汗でびしょ濡れになってしまっていて、状態的には最悪だ…と顔を顰めた。
棚から彼女の夜着を取り出してから、解熱剤を薬箱から出すとほの花の元に向かう。
「…おい、ほの花。薬飲め。ほの花…。」
優しく揺すってみても目を開かない彼女にどうしたもんかと思ったが、頭をよぎるのは三日間目を覚さなかった出来事。
(…解熱剤、だけでも飲まさねぇと…。)
三日間寝たままで水分も取れない、熱も下がらないなんてことは避けたいし兎に角早く体を楽にしてやりたい。
俺は枕元にあった水を手に取るとそれと薬を口に含み、ほの花の頭を持ち上げてそのまま口付けた。
彼女の口腔内は熱くて、発熱していることを物語っている。しかし、ほの花の薬は苦くてたまらなかった筈なのに口腔内で共に味わえば随分と甘く感じた。
ごくん、と嚥下する音が聴こえたのでホッとしたのも束の間、ゆっくりと目を開いたほの花と目が合う。
突然、発熱したことで慌てて薬を飲ませてしまったが、飲ませ方はまずかった。安易に口付けたようなもので、明らかに彼女はまだそういう関係になることを同意しているとは言えなのだから。
「…うずい、さん…?」
起こしていた上半身をゆっくりと横たえてやると苦笑いでほの花を見つめた。