第22章 今の上官は風柱様です!※
その日の夜、ほの花を連れて久しぶりに八人で食卓を囲むことにした。一人にしておくと人間どうしても塞ぎ込みがちになるだろうし、少しでも気が紛れる方がいいだろう。
雛鶴にほの花の飯は粥にするよう伝えておいたので、いつもの茶碗に少なめの粥が入って置いてあった。
「…すみません、お手数をおかけしてしまって。ありがとうございます。」
「良いんですよ!残しても大丈夫ですからね。天元様が食べますので。むしろほの花さんの口をつけたものの方が食べたいかもしれません。」
「おい!食うけど、人を変態みたいな言い方すんな!」
どんな扱いだ…と思ったが、ほの花が少しだけ笑ってくれたのでそれは良しとする。
「いただきます」と控えめに呟くと、ゆっくりと一口ずつそれを口に運ぶ。
やはり食は進まないのか、途中でため息を吐きながら懸命に食べ進めるほの花を見て、可哀想になってきたが、食べるしかない。食べなければどんどん食べれなくなるのだから。
「…ほの花、無理しなくていい。残りは俺が食ってやるから。」
「も、もう少し…食べます。大丈夫です。吐きませんから。」
「…そういや初対面で胸に吐かれたことあったな…。」
「……忘れて下さい。」
どう頑張ってもほの花との出会いは忘れられない。あれほどまでに運命的な出会いはなかったと思う。
最初はとんでもない酔っぱらいに声をかけちまったと後悔したが、あの時声をかけなければ、隣に彼女はいないかもしれない。
他の柱の継子になっていた可能性もある。
茶碗に入っていた粥を全て平らげるとホッとしたような顔で箸を置いたほの花。
目の前に広がるおかずには目もくれず、お茶をゆっくりと飲んでいるが、粥をそれっぽっち食べたところで大した栄養にはなりゃしねぇ。
胡蝶の言う通り、点滴を入れる寸前の状態だと言うことはわかるが、食べ始めさえすれば残すのは失礼だと頑張って食べ進めるほの花。
時間の無駄なんかじゃない。
お前はこんなにも頑張ってるじゃねぇか。
自分のことなんかに使う時間は勿体無いと虚無感を感じているほの花にどうすれば大切な奴だと言うことをもう一度分かってもらえるのだろうか。
しかし、事態は思ったよりも深刻だとその日の夜にすぐに思い知らされることとなった。