第22章 今の上官は風柱様です!※
大事なほの花のことをほの花にぞんざいに扱われたことが苛ついて怒ってしまったが、怒ってから意味がわからなくて首を傾げる。
抱き上げた体は感じたことないほど軽くなってしまっていて、焦燥感に駆られるが、それ以上にもっと焦っていたのはほの花の態度だ。
点滴が必要ならば受けた方がいいとは思う。
医療のことはそこまで詳しくないから胡蝶に言われたならやればいい。
しかし、いまのほの花は自分に関することで時間を使うことが無駄だと言っている。
無駄ってなんだ。無駄なわけがねぇ。
俺はほの花のためならいくら時間を使っても惜しくないと思っている。それなのに当の本人がその考えを真っ向から否定してくるのだ。
ほの花の部屋に入るとゆっくりと畳に座らせて彼女と向き合う。
「…飯食えねぇのはつらいと思うけど、時間がもったいないから点滴使えばいいって考えは賛同できねぇ。」
「…すみません。訂正します。申し訳ありませんでした。それなら食事療法でやります。」
「違ぇだろ!!お前、どうしちまったんだよ?何に対しても誰よりもひたむきに努力してきたのはほの花だろ?もっと自分を大切にしてやれよ!」
そうだ。今のほの花は人形のよう。
言われたことをやり、言われた通りにする。
そんな抜け殻みたいなほの花は見たくない。笑っていてもどこか覇気がないのは身体がつらいのかと思っていたが、……違う。
本当に栄養剤を入れないといけないのはコイツの心だ。
「あはは…、大切にするほどの人間じゃないですよ。」
どれほどお前が傷ついていたのかやっと分かった。そんな風に心を閉ざして一人で抱え込むほど俺はお前を追い詰めたんだな。
後悔しても後悔してもしきれない。
それでもお前を手離すことなどできやしない。
また隣で花のような笑顔をむけてくれることを願わざるを得ない。
もう二度と手離さないと決めたのだ。
大切にするほどの人間じゃないだと?
俺の女に二度とそんなこと言わせやしない。
自分の女を大切だと感じないわけがない。
大切な女だから何度だってほの花を追い求めるんだ。