第22章 今の上官は風柱様です!※
宇髄さんに食事が喉を通らないことが既に知られてしまっていた。
しのぶさんのことだから私のことを彼に頼んだのだと思うけど、ただでさえ迷惑かけたのにこんなことでも心配させて申し訳なさの極みだ。
正直言えば、彼の元に戻れば食欲などすぐに戻ると思っていた。
それなのに食欲は戻らないし、継子に戻ったのはいいが恋人期間があったため接し方がわからずに苦悩している。
宇髄さんは私のことを恋人という立場にも戻ってもいいと思ってくれているような気がするけど、自分の心がそれを許さない。
彼の継子にだけ戻れればいいという同じ着地点に着くためにはどうしたらいいのだろうか。
「…点滴が受けてぇなら胡蝶のところに連れて行ってやるけどよ、お前、どうした?」
「え?何がですか?」
「何でそんな自分に興味なさそうなわけ?」
その言葉の意味がよく分からない。
興味なさそう?どういうことなのだろうか。
自分に興味なさそうと言われる理由は何なのか。
「興味、なさそうですか?わたし。」
「ああ。全く無さそうだな。」
「…そんなことないですよ?ただその方が手っ取り早いかなと思っただけです。こんなことに手間暇かけてたら時間がもったいないじゃないですか。」
「…こんなこと?」
下を向いたままだった私は宇髄さんの声を後頭部で受け取ると、体が急に浮遊感に見舞われて、彼の体に掴まった。
「…訂正しろ。何だよ、こんなことって。」
「え…?て、訂正…?」
「大事なことだろうが!お前がちゃんと食べられるようになることは!!それを点滴のが手っ取り早いって何だよ。医療は手っ取り早いから使うのか?!治すために使うんだろうが!」
宇髄さんの言葉は的を得ている。
確かにそうだと思う。
思うのに…自分のことに手間暇時間をかけることが面倒臭い。
何でこんなに面倒なんだろう?
簡単なことだ。
彼の元に戻ったとしても彼の恋人に戻ることは許されないって自分でちゃんと分かってるから。
どれほど彼が望んでくれたとしてもそこに戻ることはないのだから、私にかける心配や手間暇は不必要。
無意味なのだ。
だとしたら
こんな面倒くさい事はない。