第22章 今の上官は風柱様です!※
全力で否定をしてくれたほの花は先ほどまでの勢いはなくとも下を向いたまま、再び話し出した。
「あの、宇髄さんは…本当に悪くないので…!私が勝手になっただけで…!頑張って食べますので、心配しないでください!」
その内容は努力家で真面目な彼女らしい言葉だが、少しも自分は嬉しくない。
むしろ不満だ。
流石の俺も自分が悪かったという自負もあるからほの花の"宇髄さんは悪くない"は受け入れられない。
そして
"心配しないでください"が
"自分のことは放っておいて下さい"
に聞こえるのは気のせいだろうか。
そんなことはもっと受け入れられないことだ。
ほの花からしてみたら俺のことは師匠に過ぎないかもしれないが、こちとらほの花を恋人に戻す気満々なのだ。放っておけるわけがないし、放っておくつもりもない。
前みたいに甘えてくれて構わないのに、彼女と俺の間には見えない一線がまた引かれてしまっている。
築き上げた関係は脆く崩れ去ったと言って良いが、そんな関係しか築けてなかった自分に問題がある。
「…心配すンに決まってんだろ。無理すんなよ。食えねぇなら食える分だけ食えばいいから。体調は?大丈夫か?」
「え、あ、…は、はい。大丈夫、です。」
「それならいいけどよ。甘味は?何か食いてぇもんねぇの?」
そう聞いても"うーん…"と頭を悩ませてしまったほの花。
食べたいものなんて聞いても今は食べることが億劫になっているのだ。
きっと何も浮かばないだろう。
「…今はないので、食べたいものができたらお伝えします。ごめんなさい。」
「…胡蝶がよ、あんまり食べれねぇと栄養剤点滴しねぇといけないっつってたぞ。」
「…あはは…、その方が良いかもしれないですねぇ…。」
ボーッと下を向いたまま呟いたほの花の言葉に俺はめちゃくちゃ驚いた。
何だ、この違和感は。
いつものほの花ならば、点滴にならないように躍起になりそうなところだろ。
それなのにボーッとしたまま呟いたのはまさかの諦めてると言わんばかりの内容で。
まるで"自分のことは放っておいて下さい"と言うよりも"自分のことなんかどうでも良い"と思ってるみたいに感じた。